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    • 2017.12.04 Monday
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    谷中、洋食屋「キッチン・マロ」

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       都内で午後から用事があった。
       朝から出かけて西日暮里で降りた。ふだん、あまり日曜日に都内に来ることなどないし、まして朝から午前中の時間帯っていうのはめずらしい。改札口を出ただけで違った雰囲気。平日とはまったく違う顔だ。
       僕はマクドナルドに行きコーヒーを飲んだ。遅めの朝食を取りにきた父娘(おやこ)の女の子はおしゃべりに余念がないし、これからどこかへ出かけるふうな若いカップルはこれからの計画が楽しそうだ。ノートブックを開く人、遠くをただ見ている人、大半のひとり客にまぎれて僕も読みかけの本を開く。

       マクドナルドを出ると谷中界隈を歩いた。これから雨になると言う予報だけどまだ空は明るい。細い路地をくねくねと、公園や学校の裏や人の家のあいだや商店街を歩く。坂を上ったり下ったりする。
       トーキョーバイクの店舗にも寄ってみた。クロモリの、細身のフレームの自転車が並ぶ。決して広くない店内を5分くらいうろうろ、上から見たり下から見たり、それから店の方といくつかの話をした。初めて寄ってみた。素敵なお店だ。
       用事が13時からなので少し早めの食事を取らないといけない。

       僕は洋食屋に入った。
       ――あれ? 11時半からじゃなかったっけ。
       時刻は11時20分。すでにのれんがかかり、戸をガラガラガラとゆっくり開けてみるともう多くの人が店を埋めていた。
       かろうじてひとつ残っていたテーブルに座り、ハンバーグを頼んだ。
       別の客のテーブルにナポリタンが運ばれる。これは美味しそうだ。また別の客にチキンカツが。これもまた美味しそう。オジサン(けっこうなお年だ)がひとりで作っている。25分ほどゆっくり待ってハンバーグが運ばれた。

       オジサンは寡黙だ。しかしながら客が席を立つと、気持ちよく威勢のいい挨拶をくれる。余計なことは話さない。
       さあそろそろ行かなくては――。席を立った。
      「ありがとうございましたっ」
       オジサンが威勢のいい声をくれた。顔が若々しくつややかだ。
      「美味しかったです。ごちそうさまでした」
       と僕は言った。店を出て日暮里の駅へ急いだ。雨がポツリと僕に当たつた。

       ハンバーグにライスとコーヒーがついて680円。谷中、キツチン・マロ。


      谷中の坂のひとつ、富士見坂


      キッチン・マロ


      キッチン・マロ


      ハンバーグランチ

      雪、大内宿・湯西川温泉

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         大内宿。僕は二度ここを訪れたことがある。一度は初夏で一度は夏だ。
         雪の大内宿の話を聞いたことがあった。旧街道沿いにぽつんと残された集落、その閉塞感なら雪のなかを味わうのが最もよい、そう聞いてからその魅力を思い描いていた。
         もうひとつ、湯西川温泉で行われているかまくらのライトアップ、これも見てみたいと思っていたこともあって、じゃあひとまわりして来ようと思い二月も最後の土曜日に出かけた。

         白河を経由した。西郷から羽鳥湖を経由し、湯野上温泉へ抜ける。そう言えば去年はまったく同じルートを自転車で走った。今日はスタッドレスを履かせた車だ。僕の自転車では雪が現れたら走ることができないし、大内宿と湯西川温泉をセツトにするというのも距離的に現実的ではない。さらには湯西川温泉のかまくらのライトアップは当然ながら夜だ。それを終えて自転車で山道を下ってくるのは、小さなライトひとつでは心もとない。
         白河ラーメンの店、西郷にある彩華(さいか)に寄った。考えていた予定の通りまだ正午にならない時間に着いた。にもかかわらず駐車場はほぼ埋まっていた。店内に入るとテーブルも空きがない。カウンターが空いていたので僕は事なきを得たが、もう5分10分すると外のベンチで待ち客が出ていた。本家「とら食堂」ほどではないにせよ、昼どきは待つことになるのかもしれない。
         西郷から羽鳥湖は、ラーメン屋彩華の目の前から続いている県道で行く。一本道だ。
         しばらくのあいだ田園のなかを走り、やがて上り勾配にかかると道端に雪が見え始めた。今日は天気がいい。吸い込まれそうな青空はどこまでも奥行きがあった。僕は窓を開けて走りたい気分になった。だから一度窓を全開にしてみるのだが、車内にあっというまに冷気が流れ込み、空気の心地よさはこのうえないが、寒がりの僕には耐え続けられるものでもなかった。少しだけその空気を楽しんだら僕は窓を閉めた。
         羽鳥湖からペンシヨン村やスキー場へ向かう道を左に分け、湖畔を行きダムの上を越えて国道に出る。ここまで来ても路面に雪はない。湯野上温泉へ向けて下り基調の国道を走った。
         天栄村に入り小さな温泉集落岩瀬湯本温泉を通過する。去年自転車で通ったときも気になった温泉ではあった。今日も温泉に入れる準備はしてあるのだけど、この先の行程とかかる時間を想像するとここで入浴する時間は取りにくい。それでも風情だけでも味わえればいいなと温泉街のなかへ行く道を進んだ。


        西郷の白河ラーメン「彩華」


        ワンタンメン


        氷一面の羽鳥湖


         寒いとはいえ、雪の季節や2月であることを考えればむしろ暖かい一日だった。だから雪はずいぶん溶け始めていたし、連なる茅葺きの屋根からはあちらこちらでつららが落下していた。
         大内宿。道の雪はすっかり溶け始めていたが、宿場全体は白く覆われ日の光を浴びて輝いていた。その光景は息を呑み余計な考えごとなど一時的に忘れてしまうものだった(残念ながら余計な考えごとを吹き飛ばしてくれるものじゃない。この地を離れればまた思い出すのだ。なかなか人間の感情はそう都合よくできてはいない)。
         全景を眺めようと展望台まで上がってみた。雪で足もとがおぼつかない。これは下りは相当気をつけないと滑るな、と思う。ポスターで見るアングルで宿場町の茅葺きの屋根が並んでいた。白の光景は美しい。しばらくそのジオラマのような、まるで演出のような情景を眺めていた。ため息をつきながら空を見上げた。そこには木々が奥行き深い青空に吸い込まれるようにまっすぐに伸び、澄んだ青空はあらゆる音までも吸い込んでしまうんじやないかというほど青く純粋だった。
         展望台から滑りながら坂道を戻り、おみやげを冷やかしてまわる。布で作られた民芸品が美しくかわいらしく並んでいる。小さなものばかりだけどどれも色鮮やかでひとつひとつが個性を主張していた。見ていると手にしたくなってしまう。どれもそれなりのお値段だから、気軽にあれもこれもとはいかないから、山ぶどうとふくろうをあしらった小さな民芸品を買った。
         それからとち餅を食べる。ここに来ればたいていとち餅かそばになるけれど、白河でラーメンを食べてきたからとち餅にした。地元で「じゅうねん」と呼んでいる「エゴマ」(残念ながらこれも僕は知らなかった)であえたとち餅を食べた。エゴマのとち餅、どういうものかとちょっと聞いたらお店の方は実に親切に教えてくれた。
         そう、何でだろう大内宿の人は不思議なまでにみな親切だ。
         正直、僕は冬以外の季節の大内宿は人であふれていてうんざり感じてしまう。でも観光地という点で見ればそれだけ魅力を放っている場所であることには違いない。ともすると、人であふれ車であふれる観光地の人びとはとっつきにくさを感じる。忙しいから、面倒だから――決して口に出すことはないけれど、ときとして有名観光地でおみやげ屋や食堂に入ったときにそういった空気を感じる。あるいは観光客だからという見方をはなからされているのかもしれない。
         大内宿の人たちはいつだって親切だ。混雑していない今日のような日でも、去年やそのしばらく前に来た大混雑の初夏や夏でもだ。ひとつ聞くと、あとあと「ほかのお客さん待ってるよ」と声をかけたくなってしまうほど何倍にも答えてくれる。その話はこの大内宿の観光案内的要素からどうでもいい世間話に至るまで多岐にわたる。
         旧街道を少し離れてまだ雪で覆われた道に入り込んでみた。人はいない。真っ白な雪原が続く。雪の真新しい表面にわざと靴の跡をつけて歩いてみたりした。


        雪の大内宿


        つららと大根


        民芸品が並ぶ



        いろりのある店でとち餅をいただく


         湯西川のかまくらに火が入るのは17時半からだとポスターで見た。鉄道の湯西川温泉駅と兼ねた道の駅に立ち寄ったので、ここにある日帰り入浴施設に入っていくことにした。ここで16時半。
         ゆっくり1時間かけて温まると外は薄暗くなり始めていた。空は群青色の絵の具を少しずつ垂らすように色に染まっていく。鉄道駅で時刻表を見ると数分後に列車が来ることがわかり、僕は外へ出てカメラを構えてみた。群青色に染まった空のもと、湖の上を直角に横切ってかかる鉄橋を静かに2両編成の列車が走っていった。

         湯西川温泉に着くころには上手い具合に漆黒に包まれた。
         空には星が降り注いだ。その下をかまくら会場に向かって歩く。平家の落人の里、日光鬼怒川の奥地に存在する温泉地でありながら驚くほど多くの人がやってきている。集客があリイベントが盛り上がっていることはなによりだ。
         人の流れに任せて歩いていくと、やがて河畔におびただしい数の小さな炎が見えてきた。30センチ四方くらいの大きさで作られたいくつもの小さなかまくらのなかに、ろうそくがともされている。その数はもう数え切れないほどだ。これらすべてに火をともすのにいったいどれだけの時間がかかるのだろう。 ひとつひとつの炎がそれぞれに、ゆらゆらと揺れ河畔を彩っていた。僕は飽きるまで何枚もの写真を撮って歩いた。


        湯西川温泉駅を出発する列車


        ミニかまくらにともされたろうそく


        かまくらまつりの会場


        ミニかまくらで埋め尽くされた河岸

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