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    • 2017.12.04 Monday
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    さび落としは通行止めで……

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       もう自転車に乗らずにどれくらいになるだろう。今年の冬は寒い。そして長い。
       ひどい寒がりで末端冷え性の僕は身体を動かして温まってきたとしても、手先足先が温かくならない限り寒いと感じてしまうよう。それゆえに身体は汗をかくほどなのに寒い寒いと口にしていることがよくある。寒いのだ。
       だから朝は氷点下、日中6度7度くらいまでしか上がらない天気予報を見るたびに「ああ、もういいや」と投げ出しちゃうことの繰り返しだった。
       ──そのくらいの気温であれば輪行に出かけていた年だってそれなりにあったと思うんだけど。
       前回乗ったというのが関東鉄道常総線沿いの散策をしたときだから、もうひと月半だ。

       いくらなんでも身体もさびてきているって。
       日中の少しでもいいからどこかに行こう──。
       日が高くなって午前中の珈琲を終え、やっと気持ちに踏ん切りをつけた。

       思い付きからバタバタと準備を始めて10時半。自転車を車に積んだ。佐野、葛生へ行こう──。身体のさび落とし、坂の感覚も忘れているから。

       葛生で車を置き、自転車を下した。

       まず唐沢山に上る。
       田沼まで南下し、北斜面から上る。
       唐沢山は県道が一本、南は佐野から北は田沼から、山頂を経て貫いているのだけど、この道が2本の県道であるところが面白い。南が県道141号、北が115号。僕はこの県道115号で上っていく。

       鳥居の前から坂道になる。気持ち緩いかなと思うのは最初のうちだけ。つづら折りが始まるとともに急な傾斜が山はだに張り付いている。
       そんな坂を上っていくから、あっという間に田沼の街が小さくなっていく。
       そして僕はここを何度か訪れているけれど、いつだって見通しが良くなかったことに気づかされた。
       日光男体山が見える──。

       僕は坂の途中で立ち止まって写真を撮った。1月にコンデジを海に落としてしまって以来、カメラというカメラを持ち歩いていないのでケータイで取るしかなかった。日光連山がまるでパタゴニアのロゴのように山稜を美しく見せ、そこからひとつ突き出るように男体山が存在感を示していた。独特の雪渓がはっきりとわかる。カメラにきれいに映り込まない山々を残念に思いながら、人間の目のすごさにも恐れ入った。



       唐沢山の山頂は思いのほか車やバイクの出入りがあった。
       みんな寒いのによく来るなぁと思う。しかしもう寒くなどないのだ。寒い寒いと身体が冬眠状態にあるのはきっと僕だけなのだ。
       駐車場の日なたを選んで歩くネコを見て春が来るんだなと思いつつ、出発することにした。なぜネコで春なのか──よくわからなかった。

       下って佐野の犬伏町。日光例幣使街道で旧宿場町でもある。
       そこから県道58号に入り栃木方面へ向かった。太平山の裏手をまわり、東北自動車道に並行しながら進む。
       県道282号が交差するので葛生に戻るためにはここを越えてもよいのだけど、栃木市の柏倉まで行くことにした。柏倉から葛生に抜ける県道210号がある。この辺りでは標高のある山道だけど、ピークに峠名はないよう。ピークから登山道を通っていくことで琴平神社なる神社に行けるようで、この道へ行く人たちが「琴平」と呼んでいるのを見たことがある。

       途中廻峠という峠があるのを知った。山越えという感じじゃない。丘陵部があるという程度。でも考えてみたら東北自動車道もここの坂で渋滞発生ポイントになっていたな……などと思い出した。走っている最中、ここに峠の名がつけられていることは知らずにいた。

       県道210号に入りその通称「琴平」の山道へ向かった。
       山道のつづら折にはご丁寧にカーブ1から順に標識が立てられている。確か葛生側の最後は38だったか。これまたご丁寧にピークはちょうど半分の19だった記憶がある。
       そこまでは緩やかな上り。

       道は田園地帯をゆく気持ちのいい道だけど、ここまで走ってきてすっかり疲れてしまっていた。出発して30キロほどか。身体のさび落としは思いのほか負担が大きい。
       ゆっくりとはしりながらいよいよ近づいてきたことがわかる。1番カーブの脇にカートのサーキット場がある。カートが走りまわる大きな音が聞こえてきたのだ。



       ──通行止め?
       一瞬目を疑ったけど、1番カーブまで行ってみるとバリケードが置かれていた。

       車で来ているので葛生には戻らなくちゃいけない。しかしここが通れないとなればさっき見た県道282号。岩船まで戻り直す必要がある。ゆうに5キロ以上は戻されるのではないか。
       この程度のバリケードはそのまま跨ぐことも僕の場合よくあった。好きでやっているようなもので、本当に行けないとなれば戻ればいいということをしていた。
       でもなぜか今日は自転車を担いで跨ぐことをしなかった。なぜだろう、気持ちの問題。

       僕は走ってきた道をまるまる戻った。
       田んぼのなかの直線を緩やかに下る。
       ロードが一台、すれ違った。
       「この先、通行止めでした。葛生には抜けられません」
       と僕は彼に告げた。彼は驚いたようにその脚をゆるめたようだった。

       廻峠をもう一度越え、岩舟まで戻るころにはへとへとだった。さび落としはひどい疲労をともなっていた。



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