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    • 2017.12.04 Monday
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    古風な石橋を見に行く

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       自転車の準備を始めたのがすでに10時過ぎ。家を出たのが11時前。もうこの時間にもなるとまるで一日の半分を使い切ってしまったようだ。
       そんな時間になってしまったのは行き先がなかなか決まらなかったから。
       どこへ行こうか考えていたとき、古峰ヶ原の紅葉が見ごろという情報が目に入った。しばらくこれが頭から離れずほかを思いつくことができなかったのだ。
       しかしすでに今現在経済的余裕がない。輪行も行くにしたって極力安く行ける範囲と考えていた。それでも古峰ヶ原は捨てがたいと気持ちが押し合い引き合いを続けて、結果列車の時刻を調べてみたら9時半過ぎの列車に乗っても11時半近くになることがわかり、やっとあきらめる踏ん切りがついた。

       上尾の瓦葺近く、スタートしようと見沼代用水沿いの緑のヘルシーロードに立った時点ですでに11時半をまわっていた。
       これからこの道を走って羽生、利根川の近くまで行こうというのだ。──明らかに時間の計算を間違えてやしないか。

       ヘルシーロードはそのまま利根川まで自転車道で走れる道ではあるけれど、その距離を見ると最短距離から程遠い。水路の屈曲した流れに合わせて進むのだ。距離や時間から考えれば、県道や国道で走っていくほうが早いに違いない。
       それでもこの道を選んだのは、県道や国道をどの道を使っていくのがいいのか、それを調べるのが面倒だったからだ。

       水路沿いに開けた景色は青空のもと穏やかな秋の日和に映る。
       しかし実際には、まるで冬のような北西風が吹いていた。昨日抜けていった台風が低気圧になり東の海上へ、西からは高気圧が張り出し、気圧配置だけは冬のようだったからだ。もっとも冬と違って上空に寒気が流れ込んでいることもないから寒いということはないわけだが。
       ヘルシーロードを上流に向かうということは、北西に向かってひたすら進んでいくということだ。
       今日僕は20km以上も正面から吹き付ける強い風のなかペダルを漕ぎ続ける必要があった。


      見た感じだけなら穏やかな秋晴れのもとのヘルシーロード


      一面咲いたコスモス畑ではコスモスまつりをやっていた


       羽生から加須にかけて会の川という名の川が流れている。小さな川で地図でも見つけづらいけれど古くから用悪水路としてあった川で、古風な石橋が多く残っていると知った。
       ヘルシーロードを離れ、羽生市内で会の川沿いへ立ち入ってみる。加須市内はむさしの村の裏手や高校の敷地内を通るようなので羽生市内の一部区間に行ってみた。


      地図で見て引いた川沿いのルートは未舗装どころかすでに人の入らぬ道


      興味に任せて押して進んでみたらこんな事態に


      すぐ隣を並行する南方用水路沿いには道があった





      右岸左岸の道が自然に還っているゆえ用途のない橋



      左右欄干の異なる橋などは貴重






       川をさかのぼりながら源流点までたどった。


      川をたどっていたら秩父鉄道が通過して行った


      本日のルート(GPSログ)

      STIブラケットカバー/交換の巻

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         自転車屋に取り寄せてもらっていたブラケットカバーを取りにいった。
         どう交換するかを考えていなかったけれど、ワイヤーの取り回しがどうなってしまうかわからない(結局張り替えなくちゃならないんじゃないか)ので、ブレーキのインナーとアウターを買ってきた。シフターのほうは以前、変速の調子があまりよくないときに、まったくと言っていいほど替えていないシフトワイヤーのせいかもしれないと買っておいたワイヤーがある。やっぱり面倒と手をつけずに放置していたのだ。
         加えてバーテープも真っ黒だ。このハンドル周り、一切合切やってしまおうか──自転車屋から帰りながら段々とそういう考えになっていた。
         それに通常、アウターのなかに隠れているインナーワイヤーはどのくらい劣化してしまっているのかよくわからない。だから長いこと使っているようならもう腹をくくって換えてしまったほうがいい、そうに違いない。

         ワイヤーを新しいものにすること自体はそれほど大変なことじゃない。
         バーテープを含めたところでふつうに考えれば手馴れた作業の一環でできる。
         でも今回、なかなか腰を重くさせたのは、この自転車がフレーム内蔵でワイヤーを取り回しているということだ。


        フレーム内蔵型のワイヤーをこんな場所から通す


        通せればこのようになる


         案の定、フレーム内蔵の部分を通すのがいちばんの手間だった。
         最近多いみたいだけれど、なんでフレーム内蔵型を……。引きも重くなるだろうし、メリットがあまりよくわからない。

         ワイヤーを抜き、本題のブラケットカバーを取り替え、ワイヤーを新しいもので張り直し、STIを固定。ブレーキを調整しディレーラーの変速を調整する。
         ひととおり終わってから余ったインナーワイヤーをカット、手を洗ってバーテープの巻き直し。
         これだけの作業4時間半もかかってしまった。
         かなり疲労。この残った疲労感を覚えてしまうと、次回なかなか重たい腰が上がらなくなるのだろうなぁ。


        やっと完成


         左右のブレーキのアウターワイヤーの長さがバランスが悪いことに気づく。後ろ側ならともかくハンドル側で、ワイヤーを再び取り回すことなど考えられず、このまま行くことにした。

        STIブラケットカバー

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           STI──シマノのドロップハンドル用変速レバー兼ブレーキレバーは、ブラケット部から内部構造を覆うようにゴム製のカバーが付いている。
           どうやらこれが劣化するらしい。
           何だかべとべとするなぁ──ここのところ、いやずいぶん前から気になっていた。
           ただ、こぼれたドリンクが付いたとか、鼻を拭いた手でそのまま握ったとか、そういうたぐいのせいだと思っていて、気になるたびに雑巾で拭いていた。なのにここにきて、どんなに拭いても、洗剤つけて洗ってもべとべと感が取れないうえ、握るだけでも消しゴムかすのようにボロボロ落ちるようになってきた。手にもつくので手も汚れる。

           さすがに寿命なのか、と自転車屋に出向いて聞くと、べとべとやボロボロはがれ落ちるのは典型的寿命だそう。
           やむを得ないか……。もうずいぶん長いこと、そう5年くらい使っているだろうか。おまけに僕の場合屋外保管だし……。

           替えのブラケットカバーを探してもらったのだけど、やはりなかった。残念ながら5600系105の消耗品は他のものも含め店頭に置いてもらえなくなってきているようだ。
           また来なくては──。面倒だけど取り寄せだけお願いしておしまい。

           「あ、そうそう、ブラケットカバー交換するときって、ワイヤー外さないとならないですよ」
           ──ん?そうなの??
           「交換方法としては、ハンドルブラケットからSTIを外して、後ろ側からブラケットカバーを引き抜くんですが、その時ブレーキワイヤーが通っているでしょう。さらにブレーキワイヤー、アウターワイヤーをハンドルに埋まったままうまいこと残しながらインナーワイヤーだけすっと抜くことができればいいですが、アウターワイヤーも、ということになるとバーテープも巻きなおしなんですよ」
           ──面倒くさい……大変過ぎる。
           どうしよう。とはいえもう本当に替えないといけないなという状況にはなっている。大がかり過ぎるなぁ、いつやろう。


          GPSマップ

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             今まで使ってきたソニーの自転車ナビ、NV-U37のタッチが効かなくなり、使うのをあきらめたというのは何度かここでもふれてきた。
             ときにタッチが効くことはあれど(ここのところはもう、タッチが効くことのほうが少なくなった)、やっぱり出先で言うことを聞かなくなるのは困る。そうなれば次第に持っていかなくなるものだ。

             ただこれまでナビを使ってきたことで、GPSで現在地がわかり、地図が見え、走るべき道が示されるメリットは十二分に認識した。
             現在地が常にわかることによる目的物の認識(行き過ぎない!)や、これまでは「どこに行ってしまうかわからない」と侵入をちゅうちょしていた興味ある脇道に入れることがサイクリングの幅を大きく広げたからだ。
             壊れたNV-U37を見ながら、さてどうするかと悩んでいた。

             僕のサイクリングにご一緒してくださるUさんが、ユピテル社のATLASシリーズを使っていた。僕がソニーNV-U37の状況やソニー社の対応を話すと、じゃあこのATLASを譲りますよ、と言う。
             まさかそんな話の展開になるとは思っていなかったので僕は恐縮し、いったんは辞退しようかと思ったのだけど、Uさんはガーミンを買う検討をしているという。それで使わなくなるATLASを使ってもらえれば、と。

             かくして僕はATLASを手に入れた。もともとあったであろうUさんのガーミン購入時期計画を僕が前倒しさせてしまったような罪悪感は持ちつつも、ありがたく使わせていただくことにした。


            ATLAS ASG-CM12


             前回の金精峠サイクリングで初装着。
             僕は事前にルートラボでコースを引き、GPXファイルを機器に取り込んで表示させるという使い方をしていたので、機器が変わっても用途としては変わらない。
             そうはいってもソニーと違う部分もある。使い勝手にどう差が出るだろうか。
             今回のサイクリングは道も県道プラス国道のみ。しかも車では何度も走ったことのある慣れた道だったから、地図がなくても走れるコースだった。未知の土地に行って使ってみたい。

            金精道路をこえて群馬から栃木へ (2013-10-12)

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               今回、金精道路へ行きたいという動機は紅葉とは関係がなかった。
               ただ金精峠から見た奥日光湯ノ湖や男体山の風景が見たいという単純なものだった。
               だから奥日光の紅葉情報も収集していなかったし、むしろ残暑がぶり返してきたようなここしばらくの暑さのせいで山の紅葉が始まるという意識の切り替えすらできていなかった。
               天気予報は今日も同様に、28度だの29度だの、ところによっては30度にもなると関東の平野部の予報を出していたわけで、また今日も暑くなるのだろうと思っていた。
               とはいえどちらかというと僕は寒いよりは暑いほうが歓迎である。だからこの三連休で明日以降気温が下がると言うのなら今日自転車に乗るほうが好都合だ。

               僕がかつて金精道路を越えたのはもう5年も前のことだった。東武日光の駅からいろは坂を上り中禅寺湖、竜頭の滝、戦場ヶ原を経て湯元から金精道路へ向かった。きつい上りに何度も足を止め、やっと上りきったあとトンネルを抜けて群馬県側を下った。金精道路を越えることに精一杯で旅の様子はあまり記憶がない。坂がつらかったことがせいぜいだ。
               しかし金精峠から見る栃木県側、湯元から戦場ヶ原とそびえ立つ男体山の光景がことのほか絶景であることを知る。
               それを知ってからいても立ってもいられなくなった。

               朝の上越線を岩本駅で降りた。
               どうしても奥日光に行くというと日光からのアプローチを考えてしまう。でもそれだからいけないのだとあえて逆の発想、群馬県側から上り、金精トンネルを越えてそこで絶景を味わおうと考えた。
               前回、松姫峠に案内してくれたUさんがご一緒してくださった。


              トンネルに向かう上越線と岩本駅


               このコース、最短でも90キロを超えてしまう。確かに日光から金精峠へ向かってピストンで日光に戻ってくれば距離を短くすることができる。でも単純往復のコース設定は面白くない。起点と終点を別に置くならどうしてもこの距離になる。
               このルートにあたる国道120号は日本ロマンチック街道の一部になっている。となれば沼田から走り出すのが定石。沼田から日光まで走れば国道120号全線走破というオマケもついてくる。
               が、あえてひとつ手前の岩本駅を起点にした。国道120号の道路混雑と途中にある椎坂峠を回避するためである。全体距離の長さから負担をできるだけ少なくしようと考えたのだ。



               このルートを選択したおかげで薗原ダムに立ち寄ることができた。
               僕はスキーをやっていたころ、この道をよく車で通っていた。そこにダムとダム湖があるのは地図から知っていたけれど、実際にダムを見て、立ち寄ったのは初めてだ。ダムの前に立つとその迫力に圧倒される。しばらく見入った。
               薗原ダムの管理事務所に立ち寄るとダムカードをもらうことができた。ダムの広報活動の一環として訪れた人に対し無料で配布しているカードがあることをTV番組を見て知り、少し興味を持っていた。ダムの仕様や技術的な内容まで書かれており、僕にはわからない内容だけどここに来たという記録になるのは面白い。そういえば長男が昔集めていたトレーディングカードゲームのカード入れがあるかもしれない。ひとつもらうと妙な収集欲をかき立てるように思えた。他のダムでもなかなか行けない場所であればなおのこと立ち寄ってみたくなる。

               ここ薗原ダムから現在の県道62号をたどるとかつての根利村、黒保根村といった場所を経由し大間々へ抜けられる。赤城山の東麓を抜ける道は古く根利道と呼ばれ、利根川水運とあわせて下総と交流もあったという。現在はずいぶんルートも付け替えられてはいるが、大間々から桐生に抜けられるルートも瞬時思い付くし東武線輪行にも使いやすそう、いつか来てみようと思った。道路の分岐を見るといつもこんなふうに考えが広がる。

               国道120号に合流するとぐんと交通量が増えた。大型車も多い。怖くて走れないという道ではないけれど、ここまでの左右の景色をあちこち見ながらのんびりとというわけには行かなくなった。
               吹割の滝に寄りましょう、と僕らは道端に自転車を止めて岩場の階段を下りた。


              好天のもと迫力の薗原ダム


              水煙上がる吹割の滝の渓谷


               渓谷の岩場を歩く。自転車靴だと滑りそうなのであまり奥までは行かず切り立った岩肌と割れ落ちる滝を楽しんでもと来た道へ戻ることにした。戻る途中、今僕らが見た滝は吹割の滝ではなく鱒飛の滝という別の滝だと知った。残念がったが再び岩場の遊歩道を歩いていく気にもなれず自転車に戻った。

               鎌田交差点、国道401号が分岐する。大きな斜張橋の尾瀬大橋が見えた。尾瀬に向かう車も別れ、多少交通量も減るだろうと思った。ここからとうもろこし街道が始まる。
               とうもろこし街道とは、このあたりで採れるとうもろこしを焼き通行客に振舞う店が軒を連ねることから呼ばれる。夏のものなので時期は終わっているけれど、あちらこちらでしょうゆが炭にこげるにおいが立ち上っていた。
               いよいよ標識に金精峠の文字が現れた。しかしまだ20キロ以上。ここまでもずいぶんな距離を大半上り坂で走ってきた。何度も止まりながら先へ進む。
               サエラというスキー場が右手に見えた。リフト券が安いわりに充実した斜面が揃っていたから何度か来たことがあった。しかしバブル期に作られたスキー場はスキー客の減少にあわせるように、リフトを止め営業斜面を減らしていった。今見えている斜面はもう数年前に営業をやめてしまった斜面だった。もう10年20年すると木も生い茂り周囲の林との差も消え、自然に帰っていくのかもしれない。サエラは今年また山頂からの斜面の営業をやめるらしい。スキー場としては存続するようだけど、もうセンターハウス前の一本の緩斜面が残るのみになるのだろう。

               集落もなくなり、緑のなかを淡々と上る道になった。
               Uさんが「眠くなりますね」と言う。僕も同様だった。眠い。「本当ですね」と答えた。風景が単調すぎて朝も早かったからふたり揃って睡魔と闘うサイクリングになった。


              とうもろこし街道 そしていよいよ金精峠の文字


              眠気を払いながら休憩しながら


               なかなか予定通りには行かないものだ。
               ペースよく上れたならば金精トンネルの手前、菅沼近くにある菅沼茶屋で昼食にしようと思った。しかしそうはいかない。
               考えてみればこのルート、90キロ超の距離のうち頂点となる金精トンネルは日光から約35キロの地点にある。とすれば逆の沼田からは60キロもの距離があることになる。沼田でも今日の出発地の岩本からでも距離はほとんど変わらないから60キロひたすら上り続ける必要があるということだ。そう簡単に金精トンネルまでたどり着けるものではないとわかった。
               だから僕がそもそも空想していた菅沼茶屋でお昼などという距離感はまったく根拠もない。12時半を過ぎても変わり映えのしない景色のなかを相変わらず眠気を振り払いながら進む僕らとしては、丸沼高原の看板が出てきたときは、「もうここでお昼にしましょう」と言うのが精一杯で必然的結果だった。
               冬はスキー場の食堂になるそこで、今日はじめてゆっくり腰を下ろした。
               目の前の斜面ではグラススキーをやっているのか、頻繁に人が滑り降りてきていた。

               やはり自転車、食事をすると違うものだ。眠気も去りいくぶんペダルも軽く漕ぎ出せた。
               しかしここに来て天気がかんばしくない。朝、あれほど澄んだ青空が広がっていたというのにすっかり雲に覆われてしまった。ときおり細かな雨粒が落ちてきて当たる。そして驚くことに寒い。僕の体感がそう感じただけかと思ったがUさんも寒いと言う。Uさんはウィンドブレーカーを着込んだ。僕も相当寒いと思ったが、手持ちのウィンドブレーカー一枚しかないので、これを着たら最後もう上に羽織るものはない。それに汗をかいて冷やしてもいけないと思い、金精トンネルまでは我慢して行くことにした。

               周囲の葉が色づいていた。そうだ紅葉の季節なんだと思う。そして色づく木々に混じって白樺や熊笹も現れ高原道路の風景になった。緩いカーブのつづら折で上って行く国道120号は美しい道路情景を描いた。条件の揃ったこれだけの道に、重苦しく立ち込めた鉛色の雲が恨めしく思った。朝の澄み切った青空のもとであれば目に鮮やかなコントラストでこの情景を切り取れたに違いなかった。

               いよいよ金精トンネルが現れた。ここまでの長い長い上り道にやっと終止符だ。本当に長かった。
               ここで一息入れたいところだけど、群馬側の坑口には何もないのでそのまま突入し一気に栃木県を目指した。


              厚い雲に覆われて気温も一気に下がった


              伸びやかな高原道路となった国道120号
              天気が惜しい……


              金精道路群馬側を制覇しトンネルへ


               金精トンネルを抜けホッと一息。県境を越えて栃木県に入った。
               せっかく抜けてきたのだから晴れ空のもと迎えて欲しかったけれど、群馬県側から追いかけてきた鉛色の雲が一帯の景色をグレーのフィルターにかけていた。
               おまけにこの日都心が30度あったとは到底思えないほど寒く、Uさんと山頂で交わす会話ではお互いの息が白くなるのを確認できるほどだった。僕はここでウィンドブレーカーを着込んだ。

               分厚い雲はまだここ金精峠までしか覆いかぶさっていないようだ。遠望できる湯元温泉、戦場ヶ原、そしてそびえる男体山は日差しを浴びて光っていた。
               これは期待していた景色が拝めるかもしれない──。
               金精道路、温泉街、湯ノ湖、そして戦場ヶ原と男体山を望む景色はここではなく、坂の途中にある……そう刷り込んでいたので、Uさんにそれを告げいそいそと出発する。
               おそらく、途中突然止まります──僕はそう言いほぼ自分勝手なペースで走っては止まり、走っては止まりを繰り返した。Uさんにはさぞご迷惑をおかけしたことだと思う。

               そんなゴー&ストップを何度となく繰り返し、湯ノ湖畔まで降りてきた。上りはさんざん時間がかかったのに、下りは何度となく写真を撮るために立ち止まってもあっという間だ。
               ただ撮ってきた写真は鉛色の雲がかかった金精道路と日の当たる男体山とが同じ露出ではきれいに写らない。それにあまりの寒さで震え、手ブレすら押さえ切れていない。写真の腕に覚えがあるわけじゃないから自分でも期待などしていないけれど、それでもこの目で見た広大な風景の広がりを記録として残すことができないのは残念だった。ただ記憶には残すことができた。念願の風景を見ることができた。それはもう満足だった。


              栃木県に突入
              それにしても天気が悪い、寒い


              この風景を見るために計画を温めやってきた
              金精道路、湯ノ湖、男体山


               湯元から先、ぐんと車の交通量が増えた。さすが紅葉シーズンの日光だ。
               そんななか、下り基調の道を楽に進む。しかも追い風のオマケつきだ。

               紅葉は目で見る限りどうやら戦場ヶ原から竜頭の滝にかけてが最盛期のようだった。金精峠はいささか遅かったかもしれない。
               竜頭の滝はもう日も落ちようかという時間にもかかわらず、まだまだ駐車場へ入ろうとする車でごった返していた。僕らも自転車を止め滝を見に行くが、紅葉のなかの滝を眺めるというよりは、人と人とのあいだで瞬時にカメラのシャッターを切り、終わればその場からすぐに退く、という一種の流れ作業のなかで滝を見た。

               中禅寺湖畔はこれから紅葉の盛りが来るに違いない。日がおおかた落ちかけた湖は静かに夜の準備を始めていた。ボートはすでに岸に括り付けられ、湖岸を散歩する人ももういなかった。西の空には僕らを群馬から追いかけ続けてきた鉛色の雲が見えた。太陽は雲にすでに隠れてしまった。このまま沈んでしまうだろう。

               いろは坂を下り日光市内、東照宮を左手に見つつ大渋滞の神橋交差点を右に折れると長かったこの旅ももう終わりだ。

               僕は日光市内をこの時間に走るのははじめてなのかもしれない。記憶にない風景だ。
               車で走った機会を含めて思い出しても、夜のとばりが下り始めた目抜き通りの覚えがない。

               日中の、賑やかで典型的な観光地の駅前通りという期待をはずさない、わかりやすい雰囲気とは打って変わっていた。
               そうだ、僕は日光で宿泊する機会がないからだ──。
               埼玉の越谷であれば多少遅くたって日光くらいであれば家まで帰れてしまうのだ。だからこの地に身を落ち着け、ゆっくり夜まで楽しんだことがないことに気づいた。
               昼光色の白い光ではなく、電球色のようなオレンジがかった光を放つ街灯は、通りに明るさを与えるというよりはただそこに明かりが灯っている、そんな程度だ。それが微妙な明るさ(=いい具合の暗さ)を生み出していて、なんとも言えないあでやかさ、なまめかしさ(それは場末の温泉街のようなけばけばしさでは決してなく、いい意味での色っぽさ)を与えていた。この明かりのもとおみやげ屋などを冷やかしながらそぞろ歩くのは、きっと楽しいに違いないと思った。

               駅に着くとまず東武の特急の座席指定を押さえた。
               ねらっていた臨時特急は無事に席も確保でき、最後部壁側という座席のリクエストも受け入れられた。直前のスペーシアがもう満席という状況でも臨時の特急は空いている。

               あとは安心して輪行パッキングを済ませ、時間まで駅前の喫茶店で珈琲を飲んだ。そして僕らは一日を何度も振り返るように尽きることなく話し続けた。

               今回もまたお付き合いいただきましたUさん、特に今回僕の「ここからの景色が見たい」というだけで立てた計画、少し乱暴な感がありました。ちょっと申し訳なかったかもです。そして本当にありがとうございました。また今回も写真やGPSログをいただきました。またお付き合いください。



              新三国トンネル

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                 もともとサイクリングにとってトンネルは鬼門で、多くは忌避される場所である。
                 三浦半島を走っていて横浜から横須賀へ向かうときは国道16号を走る。この区間はトンネルが多く、それぞれのトンネルに距離はないものの、あれだけの交通量のなか立て続けに路肩のないトンネルを抜けていかなくちゃならないのにはうんざりさせられる。

                 ほかにも走りにくい、走りたくないとされるトンネルとして、正丸トンネル(国道299号)、笹子トンネル(国道20号)、三国トンネル(国道17号)などが関東近県ではよく聞かれる。
                 なかでも三国トンネルは自転車にとって群馬県と新潟県とをつなぐ唯一の道路だ。おまけに正丸峠や笹子峠のように自転車の代替路になりうる旧道の類がない。もしここを通らないで新潟に行こうとするならば、大きく東に迂回し、日光から桧枝岐を経由し樹海ラインから小出に出るか、同じく日光から只見経由六十里越で小出に出るか、西に迂回するなら草津から志賀高原、野沢から十日町に抜けるか、だ。
                 ──この迂回はこれで、壮大過ぎて別の意味で心くすぐられるのだけど。

                 かような状況なので、新潟へ向かう自転車乗りは心を決めて三国トンネルへ突入する。トンネルを終えてからも続くスノーシェッドをこなし、苗場のスキー場が目に入るころやっと、自分が生きている心地を実感するのだ。

                 そんな悪名高き三国トンネルについに新トンネルが着工される見通しになった。
                 新三国トンネルという。
                 先月(2013年9月)起工式が行われ、実際にトンネル工事が始まるのは来年から。トンネル本体の工事だけで5年はかかるとか。
                 現三国トンネルは旧道として残るのかな。


                国道17号 三国トンネル


                雨の自転車旅

                0
                   自転車に乗って雨に降られるとことのほかうんざりする。何もかも投げ出したくなって自暴自棄に近いといってもいい。

                   鉄道旅をしていると、意外に雨の旅も悪くないことに気づく。
                   海沿いはあまり楽しくないかもしれないけれど、緑深い山あいなどで雨にけむる風景はじんと心にしみる。
                   乗降客の少ない駅のホームに降り立った時、列車が過ぎた静寂のなかで雨音だけが絶え間なく耳に届くと、自然と無心になれる。
                   列車を待つホームでぼんやりとライトが浮かび上がり、やがてその姿が霞んだ風景から現れてくるのは何とも言えない絵になる情景だ。

                   そんな雨独特の雰囲気を自転車旅でも味わえたらいいなぁ──などと思ったことは一度もない。
                   自転車でも雨を楽しめるような画期的なアイデアはないものか。

                   かつて、霞ヶ浦をサイクリングしていたとき、雨が降り出してそのなかでパンク。
                   雨宿りするところもなく、ぺしゃんこのタイヤで走ることもできず、あきらめてチューブ交換。交換している最中にまるでゲリラ豪雨のような土砂降りに。
                   あのずぶ濡れチューブ交換以来、それまで以上に雨が嫌いだ……。


                  今後の雨の行方は?──少し雨宿り

                  どちらから上るか、どちらから見るか

                  0
                     僕のサイクリングは、目的が「道」であることが多い。
                     なんて偏狭な趣味だろう。
                     だから旅の話をするときは「どこそこに行った」と地点地点で説明することが多い。鶴ヶ城に行ったよとか、浜名湖を見てきたとか、白河ラーメンを食べに行ってきたとか。そのほうがふつうの人(というか大半の人)には話として通じやすい。
                     旧街道や流行りのストリートのようにそのものに見どころや魅力のある道ならばともかく、ただ道を目的として出かけて「県道63号に行ってきたんだ」と目を輝かせながら話したらそれはそれは肌寒い空気が漂うことが想像に難くない。

                     でも、写真家の須藤英一さんという方が出版された「日本百名道」という本があることを知ったとき、なかなか自分のヘンテコな趣味も捨てたものじゃないぞ、とほくそ笑んだ。本のタイトルには便乗感があって好きになれない部分はあるけれど。
                     同氏の本も今年8年ぶりに新版が出版され、タイトルも「新・日本百名道」。いや、もう少しタイトルを──とは思うけれど、もうここまで版を重ねてくるとさすがに無理だろうと思う。
                     相変わらず美しい道路写真が展開される。僕のサイクリングの原動力はこの本にずいぶんテコ入れされているようにも思う。
                     この本で取り上げられた道、たとえば西伊豆スカイラインであったり、磐梯吾妻スカイラインであったり──はもとより、この本に取り上げられている道と同等、あるいはそれ以上の道を見つけ、それをこの目で見、同じように写真を撮ってやるのだという意識はいつも根底にあるように思う。
                     ただし写真は雲泥の差で全く歯が立たない、それは仕方がない。プロの写真家であること以前に、氏は道の最も美しい姿を見つけるために歩く場所のない箇所もかき分けて山に入り、日の当たり加減を時間かけて待ち、道の持つひとつひとつの表情を確認しながら多大な苦労のうえ撮影を行っていることだろうから、僕が道で立ち止まって撮ったスナップが同様の感動を生むはずもない。
                     僕はこの百名道に取り上げられた道以外に同じ感動を得られる道はないかと地図を読みふける。
                     最近、これに更なるライバル、というか情報収集元が増えた。BS日テレで放送されている「峠 TOUGE」という番組だ。

                     さて、こんな道を目的としているサイクリングのとき、どちらから走るかでずいぶん印象が違うことに気付き始めた。
                     こんなこと、冷静に考えればわかることだと言われればその通りだけど、道探訪をする身としては意外と気づかないのだ。──まあそういうことにしておいて欲しい。
                     どこの道をどちらから走るかを決めるのはわりと大雑把だ。輪行アプローチの列車乗り継ぎに左右される場合もあるけれど、なんとなく直感的に決めてしまい、一度決めたらそれを変えることもない。
                     たとえばもし東海道を走ろう、と思ったならば単純に「日本橋」から出発しよう、京都に向かおう──そう考えるに違いない。
                     その程度の決め方だ。

                     志賀草津道路こと国道292号で渋峠を越えたとき、群馬大津駅まで輪行し草津側から上った。
                     金精道路は日光いろは坂を行き、中禅寺湖、湯ノ湖を経て上って行った。

                     いずれも百名道に取り上げられている有数の道路だけど、写真にある素晴らしい道路景観を僕は見なかった。
                     それら写真は、志賀草津道路であれば白根山から殺生河原を見た風景であったり、金精道路は金精峠から湯ノ湖を見下ろした道の情景であったり。
                     景色はいずれも、僕が坂を四苦八苦上り、背にしていたものだった。
                     つまりその状況下で僕は風景を見ていない。
                     残念だ、と思った。
                     そして、このコースを逆に走ればよかったのではないか、と思った。
                     志賀草津道路は志賀高原側から走り、金精道路は群馬側から金精峠を越えてくる、ということである。

                     特に上りで自分の背中に広がる風景は見落とすことが多い。僕のポテンシャルが低いがゆえ上りで余裕がなさすぎるというのはあるけれど、これはどうしたって先々も変わらない事実である。
                     なので最高の景観は平坦か下りに持ってくるのがどうやらよさそうだ。
                     磐梯吾妻スカイラインは土湯峠から入り福島側に下った。浄土平の火山帯を貫く道路はまさに下りで、絶景を全方位展望しながら走った。坂を上りながらこの風景のなかにいたらどのくらい楽しめただろうか。

                     とはいえ、である。
                     西伊豆スカイラインは北から南に走るさいの達磨山からの道の連なりも、スカイラインからは外れるが県道411号、西伊豆スカイラインとつながる北向きのコースの風早峠からの道の張り付きもいずれも素晴らしい。
                     妙義山道路は、下仁田から上ったときの中之岳に着いたさいに突如現れる妙義山の山容も素晴らしい風景展開だし、松井田から入ったときの徐々に近づいてくる妙義山だって展開として捨てがたい。
                     ──結局両方向走らないとだめなのか。

                     上り坂だって僕の場合立ち止まることが多々あるわけだし、そのときに見つけた景色であれば取りこぼすこともない。
                     逆に下り坂の場合はいいなと思う景観であっても、あえて立ち止まるという行為は上りや平坦に比して明らかに少なく思う。
                     結局はどちらからも走らなくてはだめかもしれないけれど、そのつど風景を眺めて立ち止まるならどちらから上ってもいいわけだ。
                     要は上りでももう少し余裕を持って走って(走れるようになって)、周りを見て心にとまったらそのたびに立ち止まろうよ──そういうことにすればいいのかな。

                     秋だ。いい季節だ。今年は金精道路を群馬側から行ってみようかな。


                    西伊豆・風早峠からの眺め



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