スポンサーサイト

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    • 2017.12.04 Monday
    • -
    • -
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    八丁峠と廃墟街 (2013-06-29)

    0
       天気予報は「大気の状態は不安定、特に山沿いは午後雷に注意」という。
       だからそれほど気乗りもしていなかった。
       とはいえ、近所を走りに出かける気にもならず、とりあえず出かける準備だけしておこうとひと揃えと目覚ましをかけたのが前夜だった。
       朝5時、天気を気にしながらも出発し野田線、高崎線と乗り継いだ。

       もともと行きたかったところは神流川沿いの遡上。
       児玉から神流湖に向かうルートを走ってみたかった。
       高崎線の列車には日差しが差し込み始めていた。それはそれでいいのだけれど、窓の外に見える西の空は厚い雲に覆われていた。いずれにせよ今日の帰りは秩父鉄道で輪行して帰ろうと考えていたので、天気が悪くなればショートカットしてどこかの駅に出られるんじゃないか──そう考えることにした。
       そして予定通り、本庄駅で降りた。

       本庄という場所にまったく馴染みがない僕は、どういうところなのかはもちろんのこと、位置関係すら怪しいほどだった。ただ児玉に抜けやすそうだという理由だけで下車駅にした。
       そして国道462号を児玉に向かいながら通過した関越道の本庄児玉インターがいちばん記憶にある場所だった。──ああそうか、ここが本庄なのね、と。

       今日はこの国道462号をひたすらトレースするよう走っていくわけだけど、児玉の街なかに入るとくねくねと折れ曲がって走る必要があった。児玉ではバイパスがあるわけでもなく昔ながらの中心部を通る道だというわけだ。
       おかげで街も古きよき時代が残る感じだった。駅周辺や街の中心部が寂れていく例としてはやはりそれまで街なかを通っていた大きな道路がバイパスになり、郊外に主軸を移すことによる部分は大きいのだと思う。児玉の町は通過したに過ぎないけれど、ふっとなつかしさに帰るような場所、建物、街並みに目を奪われた。


      児玉の中心街を行く国道462号
      各戸に配するための電柱の乱立もいい感じ


       国道462号が神流川を渡ると群馬県に入った。群馬県藤岡市──僕の手持ちの古いツーリングマップルでは鬼石(おにし)町。いよいよ今日楽しみにしていた神流川沿いに出た。川に沿うと道は緩やかに上り始めた。ちらりちらりと見える川面はすでに涼しげだった。神流川を全般楽しむのなら高崎線を新町駅で降りるべきだったかと思った。今見てみれば本庄からでも新町からでも距離も対して変わらない。
       涼しげな川面から流れる風が吹くとほんの少し肌寒かった。じっとしていると蒸し暑いのに風を受けると涼しく感じるのはまだ気温が上がっていないからだ。

       道の駅おにしでトイレに立ち寄り再び国道で進むが、神流川は見えなかった。
       しばらく走ったころ巨大なコンクリートの塊が木々のあいだから遠目に見えてきた。下久保ダムだ。つまりは国道は神流川からは距離を置いたところを進み、神流川沿いに行きたければ道の駅おにしの先で県道に下りるべきだったのだ。三波石峡などがある神流川の渓谷を見ずに国道を進んだのは残念なコース設定ミスだった。


      神流川に沿って進む国道462号


      遠目に巨大コンクリート塊出現


      神流湖側から下久保ダム
      しかしこの空模様はどうだ…


       水量の少なく見える神流湖を過ぎ、そのまま国道462号を行く。今度は神流川の至近だ。道は神流川の流れに沿うように右に左にとカーブを繰り返しながら進んでいった。
       やがて秩父へと向かう県道71号と分岐した。この道は土坂峠を越えて秩父へと抜けていく。
       そこは万場という集落で、神流町の町役場のあるかつての万場町だ。ここの街並みもまたいい。スピードを落としのんびりと走った。ここも国道がバイパス化されずに街の真ん中を通っているから街が生きているのかもしれない。

       僕は土坂峠には向かわず、さらに国道299号まで向かうことにした。
       道の駅万葉の里(まんばのさと)で休憩し、さらに奥と向かう。
       およそ10キロ進み、古鉄橋(こてつはし)というところで国道299号にぶつかる。
       地図で見ると国道462号はここでその表示がなくなる。この先上野村から長野県へ越えていく十石峠越えは国道299号になるのでここが国道462号の終点かと思いきや、国道299号との重複区間であるようで、実際には長野県の佐久市まで行く道のようだ。しかも佐久が終点ではなく佐久が起点。佐久では国道141号と重複しているよう。しかしこの先国道462号のおにぎり標識は見られることはないようだ。

       そのまま上野村に向けて進むとその国道299号での十石峠、あるいはぶどう峠で長野県に抜けられる。いずれのルートも魅力的で走ってみたい気持ちに駆られる。しかし今日は手持ちの現金が少ないので、長野県側へ下りてしまうと帰りの輪行代がないのだ。
       ここはまた次回以降の機会に任せることとし、国道299号秩父方面、古鉄橋を渡って志賀坂峠へ向かうルートを選択した。


      万場の沿道風景


      国道462号はここで国道299号に吸収となる


      古鉄橋から見た神流川


       国道とは思えないセンターラインすらない299号を上り志賀坂トンネルを迎えた。これを越えると再び埼玉県に入る。
       トンネルを抜けると秩父の景色が広がった。
       ひざが痛くなっていた。神流湖あたりから怪しさは感じていたのだけど、志賀坂への上りを越えてきたらそれが顕著になってきた。いちいち華奢で面倒な体だ。自分の体をのろう。
       同じ場所にいた地元のロードの人二人組と休憩がてら会話をした。僕はこのまま八丁トンネルに向かってみたいと言った。ただ雷雨の予報が心配だというと、確かに降りだすだろうけど3時くらいになるんじゃないかと言う。ここから八丁は遠く1時間と少しはかかる。そしてそのあと国道140号に出るまでも相当距離があり、出た140号もまだ大滝だから輪行するところまで考えるとかなりの時間を要することを教えてくれた。
       それでも教えてもらった計算ならばさすがに3時になることもなさそうだ。
       とにかく道は悪い。パンク覚悟で考え、下りは砂利に乗ってずるっと行くから絶対に飛ばさないほうがいいと助言してくれた。
       お二人はこのあと神流に抜けダムを回って帰るという。ちょうど僕の逆コースだ。


      志賀坂トンネル


       八丁峠へ向かった。道は金山志賀坂林道という。
       道が悪いと言われたとおり路上に鋭い石がごろごろと転がっていた。路面には大きな穴がいくつもあいている。そして梅雨の雨の残りかそれともしみ出しか、路面がぬれているところも多くあった。
       石を避けるように走るが、意識すればするほどなぜか石に乗り上げてしまう。そんなものだ。
       それよりも急にここにきて坂が上れない。目で見て斜度感のわかりにくい道でみるみる僕のペースは落ちた。そして志賀坂で感じていたひざ痛がひどく、それをかばうようにしたハムストリングが今度はつってしまった。
       何度も坂の途中で止まる。しまいには足も動かず倒れるように転んでしまった。
       でもそうやって止まるたび、この道の景観に酔いしれるタイミングを得た。百名山でもある両神山を取り巻くようにつけられたつづら折の坂道はどこまでも遠く見え、ここまでの道も振り向けば見えた。
       ここまで坂を上る体力、なかったっけ──?
       そう自問自答するほど自転車は進まなかった。それでも時間をしっかりかけ、なんとか八丁トンネルまでやってきた。
       さきほどの二人組は、八丁トンネルから先は下り坂だと言っていた──。ひざがもうだめだ。何とかここから先漕がずに済ませられれば。


      金山志賀坂林道は八丁スカイラインと呼んでもいいと個人的に思う


      八丁トンネル
      八丁峠はさらにこの上


       ところでこの道にやってきたのにはもうひとつ目的があった。
       日窒鉱山と呼ばれる鉱山集落があるのだ。
       大半が廃集落と化しているが、場所柄か大きく荒らされることなくその姿を見ることができる。

       八丁トンネルから先、かの二人組が言ったように、下り坂に転じた。もう動かないひざをかばい、ペダルを回さず下りていった。路面は荒れていて、足も動かさないので大したスピードが出ない。思いのほか時間をかけつつ廃墟と石灰石がたたずむ集落へやってきた。












       しかしどこまでが廃墟でどこまでがまだ活動しているのかわからなかった。実際、僕が鉱山集落を散策しているときに正午を迎えたようで、どこからかのサイレンやチャイムの音が耳に届いたし、国道299号から金山志賀坂林道に入り探した初めての自販機がここで、きちんと動いていて飲み物を買ったりできた。
       集落全体に生活の息吹はほとんど感じられないけれど、何らかの活動はある。廃屋となった建物もめでるように眺めることはすれどその敷地建物に立ち入ることはしないほうがよさそうだ。何より、完全に廃屋となった建物であってもニッチツの所有物であることには変わりはないのだから。


      動いていて飲み物を買うことができた自販機


       鉱山集落の独特の雰囲気を十二分に楽しみ、できればここで旅を終えたかった。
       しかしながらここには一切の交通がない。ひざの腸脛靭帯炎や脚のあらゆる筋肉の痙攣といった満身創痍をだましながらも輪行可能な場所まで行かなくちゃならない。最初は下りながら秩父駅くらいまで行こうかなどと計画をしていたけれど、もう僕の頭のなかには三峰口駅以外の選択肢はなくなっていた。より近い場所で終える、そして残念ながらそこまで行けるかも心配しなけりゃならないほどだった。
       何度も立ち止まっては脚をさするように休憩し、大滝の道の駅で空腹を満たしてたどり着いた三峰口駅は、ちょうどSLパレオエキスプレスの入線した時間で、楽しそうな笑顔にあふれた乗客でいっぱいだった。周りの楽しげな様子を見てほんの少しだけ癒され、木造駅舎の片隅で自転車を袋に詰めた。


      国道140号の大滝にあるループ橋
      道路の景観で言えば指折りかもしれないけれど
      高所恐怖症の僕には走っていて背筋にかなりの恐怖を感じた


      大好きな木造駅舎のひとつ
      三峰口駅


      もし空腹がここまで持たせられたなら
      ここで食べたかった…



      中房総林道めぐり (2013-06-23)

      0
         小湊鉄道の列車はまわりの雰囲気によく溶け込むなぁと思う。かつての国鉄の気動車もこういった塗色だった。ただの個人的な感性でしかないだろうけど、この色の列車が緑に覆われた風景のなかを進んでいく光景が好きだ。気動車だから架線もなくただ車両だけが緑のなかに浮かび上がる。
         そんなことを思いながら、養老渓谷の駅でしばらく小湊鉄道の列車を眺めていた。

         今日は大福山、音信山といった場所を南北につなぐ林道をめぐろうと思ってやってきた。
         もう少し朝からきちんと計画していれば、JR久留里線の久留里あたりから上総亀山に抜け、亀山湖の先から養老渓谷駅に向かう林道から始められた。昨日タイヤを交換したばかりだったし、確認と慣らしでふつうの国道を走ることから始めるのがいいと思っていた。とはいえ時間別天気と常ににらめっこをして行き先や出る時間を決めることが多いこの梅雨時はどうしたって出が鈍るのは仕方ない(ということにする)。


        養老渓谷駅に停泊中の小湊鉄道


        林道めぐりの始まり


         今日ここへやってきたのは、このあたりの林道がツーリングマップル上紫色に塗られていたから(ツーリングマップルでのおすすめルート)。房総半島には林道が多く張りめぐらされ、またいい場所を通るものだから魅了してやまない。もともと県道や国道ですらもなぜか規格の低い道が多く、走ることを楽しめる道の選択に悩むほどだが、林道も同様だ。そして今日の林道は複数の林道の組み合わせながら長い距離をつないでいくことができる。
         おまけに全面舗装だ。ロードに乗るようになった今でもやっぱり林道には行きたいので、走る不安の少ない舗装路はありがたい。とはいえ未舗装路が現れてもあまりためらわずにがんがん入っていってしまうのだけど。

         まずは大福山へと向かった。
         大福山へ向かう道が果たして何林道なのかよくわかっていなかった。女ヶ原林道かと思っていたけれど入口に立てられていた標識には朝生原林道と書いてあった。まあ厳密なところはどうでもいい。人に話すような機会があれば道の名前がわからないのは何かと不自由するが、ここなら養老渓谷から大福山へ上って行く林道、で通じるように思う。
         途中、加茂林道を分岐したあたりから勾配がきつくなった。
         梅雨時で湿った路面、時おりコケの生えた箇所もあり滑らないように進む。
         10分程度走っただけですっかり緑に覆われた。ぽつりぽつりと住宅もあるけれど、ひたすら森林のなかをゆく。ちらりと見える周りの山の稜線も森林の緑に覆われていた。あと、竹が多いのも房総の特徴のひとつだと思う。

         大福山のピークらしきところではちょっとした展望台があった。車も何台か置けるスペースがあったけれど、そのスペースも展望台もたいして広くはなかったので立ち寄らなかった。緑の稜線ばかりでどちらの方角を向いているのかもいまひとつぴんと来なかった。
         そこを過ぎると道は下りに転じたが、すぐに大福山林道との交点に出た。


        薄暗い森のなか


        大福山林道との交点に到着


         大福山林道との交差点に掲げられた地図を見ていたらふたりのバイク乗りが同じように地図を見、道を探しているようだった。聞くと亀山に降りたいらしいので、僕が来たほうの道は養老渓谷から来た道だと告げた。それならと彼らは大福山林道のほうを選んで走っていった。バイクにはフライフィッシング用の竿が刺さっていた。
         歩いて周辺を少し散策すると、僕が来たほうの林道は女ヶ原林道だと書いてあった。
         今度は車が一台やってきて、道の少しへこんだ場所に止まった。降りてきた人はザックを背負い「こんにちは〜」と言って僕の来た女ヶ原林道のほうへ進んでいった。僕も「こんにちは」と答えた。トレッキングだろうか。登山用の案内もいくつか見かけたし、大福山周辺に登山コースもそろっているようだった。

         大福山林道に合流し、北へ向かった。
         緩めの下りと上りを繰り返しながら、道は稜線上に出たようだった。左右共に遠くまで見通せるようになって来た。
         どちらの眺望も緑の山々が見えるだけだった。この景色のなかに身を置かれているとなんだかとても山深い場所にいるような錯覚に陥る。しかしながら標高はわずか150mから180m。房総の自然の奥深さを感じた。
         遠望はどれだけ利くのだろう。朝からすでにもやっていて遠くまでは見通せない空気だった。澄んでいればどのあたりまで見えるのだろう。もしかすると今は霞んでしまっているだけで東京湾の海が見えているかもしれない。
         眺望が開けた場所でさまざまな鳥の鳴き声が響くなか立ち止まって遠くを眺めたり写真を撮ったりした。自転車が一台通り過ぎた。軽く会釈をするといぶかしそうに僕を見て通り過ぎていった。あとで思い出してみれば今日すれ違った自転車はいずれもロードで、見るからにアスリート系だった。路面は荒れているところもあるけれど、交通量がほとんどなく、適度にアップダウンが繰り返すコースは練習にもってこいなのかもしれない。練習で追い込んでいる身からすれば、自転車を止めてガードレールの上に乗って遠くを見たり写真を撮ったりしている様子は、不審に思うに違いないことは容易に想像できた。

         林道が県道を横切ると、万田野林道になっていた。道路としては一本でも林道としては複数がつながっているようで、どこからどこが何林道というのがわかりづらい。
         万田野林道の次は音信山林道、そして丹原林道と続いた。
         万田野林道は大福山林道から続く稜線上の道、引き続き緑深い山々を左右に見ながら進んだ。この2林道をつなぐ区間は「スカイライン」と称していいほどだと思った。
         音信山林道は一変して森のなか。木立や竹に囲まれた薄暗い道だった。竹林はところどころ放置林になってしまっているところもあり、枯れて朽ちた竹が道路に覆いかぶさるように倒れていた。背の高い車は竹に引っかかってしまうかもしれない。
         丹原林道は入口を見過ごしそのまま県道を進んでしまいそうだった。入ってみても林道っぽさはなく家から家を結ぶ市道といったムード。周囲も田畑農地が多いから余計そう思えた。
         ひととおり走り切り、ツーリングマップルの紫道路は終了。国道409号に出た。
         道路反対側少し離れたところに目をやれば同じ山吹色の林道標識が見えた。少し興味を持ったが、ここから木更津に出る計画をしているので写真だけ収めて今日の林道めぐりを終わりにすることにした。


        林道を走っているとこういうことはよくある


        緑深い山々


        大福山から万田野の林道にかけてこんなすばらしい道が続いた


        朽ちた古い標識などを見るとつい萌える


        おしまい 今日走った林道集


        やっとタイヤを交換した

        0
           トレッド面がぼろぼろになってしまっていたタイヤ、買い置きはあったのだけどなかなか重い腰が上がらず放置したまま。
           実際パンクもせずに走れていたし……。

           やっと交換。タイヤ買ったの自体もう半年以上前かな。
           長男が使っていたお古を使っていたとはいえ、カラータイヤが嫌だったんでやっと脱却。
           

          二度上峠 (2013-05-26)

          0
             BS日テレの番組「峠 TOUGE」で見てずっと興味を持っていた道だった。
             実は先週、いざ出かけようと地図まで準備していたのだ。しかし同日は大規模ヒルクライムレース「榛名山ヒルクライム」が行われることを直前に知った。僕の考えたコースは大会のスタート地点も通るし、数千人規模で行われる大会だから、どうしたって「これはそばによるのはやめておこう」となった。

             日をあらためた今日、早朝の高崎線に乗って高崎に向かっていた。始発列車の一本あと。始発列車でも良かったのだけど、高崎までだからそこまで早くなくてもいいだろうという考えと、高崎線の下り始発列車は混んでいるという経験・記憶もあったけれど、早起きが面倒だったというのがいちばん大きい要因かもしれない。
             ──しかしなぜ高崎線朝の下り列車は10両編成ばかりなのだろう。


            朝の高崎駅


            デポジット制の自転車シェアリングが行われていた
            自転車が全然ないのだけれど……


             朝とはいってもそろそろ8時、早朝ではない。それでもまだ寒い季節には8時前から走り始めるなんて滅多になかったわけだから、早いスタートだ。
             まずは倉渕へ向かった。かつて倉渕村、今は高崎市に編入されたそこは先週のヒルクライム大会のスタート地点でもあった。
             高崎から県道29号、国道406号を経ていくが、道自体は道なりにたどっていくことになった。烏川沿いに遡上していく。
             かつて役場のあった室田に近づくと、先週の大会のスタート地点を思わせるものがいくつか残っていた。僕は自転車でレースや大会、イベントに出たりすることがないのでさながら祭りのあとの町を潜り抜けていくようだった。
             この室田から先が国道406号になるわけだが、国道406号に入ると道は徐々にしっかりとした上り坂に変わっていった。

             烏川沿いは涼しくも感じられた。権田という集落まで行くと国道406号は右手へ進路を取る。北に向かい、峠を越え、長野原草津口の駅へ向かうのだ。
             二度上峠に向かうには権田から県道54号に乗り換える。とはいえ、走る側から見るとまたしても道なりに進む感じでもある。今日僕がチョイスした道は高崎から北軽井沢に向けて一直線に抜けるよう作られたルートなのだろうか。

             県道54号はその交通量に対して余りあるほどの高規格な道路で出来上がっていた。おそらくここ10年かそこらで造りかえられた道なのだろう。路肩も広く造られ、路面はまるでローラーをかけたばかりのような平らな舗装だった。
             道端には山藤がたくさん咲いていた。さほど急ではないけれど上り続ける坂道を僕はあせらないようゆっくりゆっくり進んだ。そんな僕を真っ赤なスバルのBRZが追い越していった。トヨタ86と同じ車だからまるで、テレビの「峠 TOUGE」を再現しているようだった。


            先週の榛名山ヒルクライム


            今日のアナログ・ルートナビ


             ちょうど距離的にも休憩ポイントにいい場所にはまゆう山荘という公営の宿舎がある。玄関前にはバイクラックもあり休憩に桃太郎ソフトをどうぞという場所だ。桃太郎ソフトとはどうやらトマトを使ったソフトクリームらしく、味のイメージが浮かばないけれど話のタネにはいいかもしれないと立ち寄ってみた。
             重厚な石造りのホテルに自転車の格好をした人間はいささか不釣合いに感じた。どこでソフトクリームを売っているのかよくわからなかった。自分が果たして何をしているのかすら疑わしかった。何しろバイクラックに自転車を置き玄関を入るとそこはフロントで(そりゃそうだ)、10時前という時間はちょうどチェックアウトで混雑していたからだ。だから本当ならフロントに「ソフトクリームはどこで食べられるのか?」とためらいなく聞けばいいものを、へんな気恥ずかしさで「トイレをお借りしたいのですが」と言うのが精一杯だった。
             トイレの場所を教えてもらい、奥へ入っていくと喫茶コーナーがあった。ホテルであれば当然の造りだ。その一角に簡易なテーブルを置き、傍らに桃太郎ソフトののぼりが立ててあった。人はおらず、まだソフトクリームの営業はやっていないのだとすぐにわかった。布がかけられていた機械があったのはおそらくソフトクリームを作る機械なのだろう。
             目的のものがないとわかるとますます居心地が悪くなって、トイレだけ済ませるとフロントに礼を言ってそそくさとはまゆう山荘を出た。


            高規格な県道54号


            あちらこちらで咲き誇る藤


            まさに「峠 TOUGE」


            結局食べられなかった桃太郎ソフト


             再度県道54号に出ると、まるでこのはまゆう山荘を境い目にするかのように道の印象ががらりと変わった。道は細く荒れ気味の舗装になり、登坂はここからつづら折になった。勾配もそれまでとは変わりきつくなった。
             木々に囲まれ見通しは利かなくなり、淡々とつづら折を処理するばかりになった。はまゆう山荘で飲み物を追加しなかったボトルは底が近かった。外のバイクラックの周辺には自販機はなく、トイレのそばにあったものだから、一度出てボトルを持って再びフロントの前を通過することが面倒になってしまったからだ。背の高い木々に左右を覆われたつづら折の坂道に自販機などないことは明白だった。この道の感じでは峠を越えて北軽井沢に下りるまで飲み物は手に入らないだろうことは経験的に察知できた。
             はまゆう山荘から先のつづら折にはご丁寧にキロポストが立てられていた。まるで白石峠のようだ。こういったものはあるほうがいいのかないほうがいいのかよくわからない。あとどれだけ──がわかれば気分的に楽になったりペース配分ができたりすることもあれば、逆に気持ちの負担になることもある。
             どこかで休憩でもしていたのか、途中で僕を抜かしていった赤いスバルBRZが再び僕を追い越した。
             つづら折を進むにつれて背の高い木々が少なくなり、見通しが良くなってきた。時折、ここまで走ってきた高崎方面の景色が目に入った。新緑と常緑が入り乱れてまるで鉄道模型のライケンを色違いに置いていっているようだった。遠くまでいくつもの稜線が続いて見えるようだったが、薄くもやっていたので見通せたわけではなかった。空気が澄んでいたら安中や高崎の街が見て取れただろうか。

             キロポストが立てられていたわけだからわかっていたつもりもあるのだけど、ここの峠は「着くぞ、着くぞ」と迫る感じはあまりなく、「──っと、着いた」と感じた。
             二度上峠にはこんなに車が来ていたのかと思うほど駐車していた。僕の記憶じゃここまでのあいだせいぜい10数台に抜かれた程度だと思っていたから意外だった。もちろん、坂道を上っている途中の僕の記憶などたいして当てになるものじゃない。
             山歩きをしに来ている人も多くいるようだった。あとから調べてみたらはまゆう山荘からも登山できるようだった。峠の道路もいいけれど、確かに山歩きにもいい場所だなと思った。
             そして二度上峠の向こう側、北軽井沢側には浅間山が大きく構えていた。


            二度上峠に向かう途中に現れる距離標識


            振り返ってみると高崎方面の景色が広がる


            二度上峠に何とか到着


            二度上峠から浅間山と北軽井沢方面を望む


             高崎側と同じように薄くもやがかかっているようで、くっきり目に飛び込んでくるほどではなかった。これほどの山がはっきり目に飛び込んでくるようだとすごいだろうなと思わせた。この浅間山の眺望展開を楽しみに来るのならやはり空気の澄んだ時期しかないのだろうか。きっとそれはそれでインパクトがあると感じた。
             峠を過ぎた下り坂はまさに浅間山に向かって突き進むように、北軽井沢の高原へと進んだ。やはり標高千メートルを越える場所での下りは寒かった。それでも北軽井沢自体が高い場所にあるがゆえ、それほど下り坂も長くない。急に華やかさを増した高原地帯に入り、最初に見つけた自販機の前で僕は自転車を止めた。

             北軽井沢からは県境を越えて軽井沢に抜けようと思っていた。北軽井沢交差点を左折して国道146号に入った。
             右手に浅間山を常に見ながら進む道はなかなか気分が良かったけれど、やはりなんといっても交通量が多かった。二度上峠の交通量はそれこそ道路を自由気ままに使えたけれど、ここではひたすら路肩に張り付いているしかなかった。そして浅間山を見ながらの道はまた上り坂になった。
             家でコースを引いてきたときに再び上りがあることは理解した。北軽井沢から峰の茶屋までは300mほど上るのだ。こればかりはどうしたって仕方がない。
             時間も昼近くになり上り坂も暑く感じた。のども渇きやすくなってきた。あ〜疲れたな──そう思いながらダラダラと上っていると一台の自転車が僕を追い越していった。クロモリの自転車はロードかと思ったらシングルギアだった。競輪選手の練習?──星マーク入りのパンツを履いたその人は明らかに僕より重いギア比で、僕よりも低回転でぐいぐいとまわしながら、あっという間に背中が小さくなっていった。
             やはり北軽、軽井沢周辺に来ると人も多い分自転車も多いのか、二度上峠に向かう最中ほとんど会わなかった自転車に会うことになった。何代もの自転車とすれ違い、何台かの自転車に追い越された。


            北軽井沢に着いてやっと飲み物を入手


            軽井沢に向かうためにまたまた上り


            峰の茶屋に到着


             峰の茶屋まで上りきり休憩することにした。飲み物を買いトイレに寄った。ここからは下り。
             下りに入り、車の通行を見極めながら車列のあいだに入った。かなり途切れることなく車列は続いている。軽井沢に向かって車が集中してきているのだろうか。やはり有数の観光地は違う。
             本当なら二度上峠を終えたら今日の旅は終わりにしたかった。しかしながら北軽井沢には鉄道がないから帰りようがない。僕が軽井沢に向かったのはその先碓氷峠から横川まで下って信越線で帰るためだった。あるいは北軽井沢から北上して吾妻線に出ても良かったのかもしれない。いずれにしても北軽井沢からどこかへ向かわなくてはならなかった。
             ぐんぐん下り軽井沢の高原地帯に入った。まだ中軽井沢まで下り切っていないよなって場所で渋滞がはじまったから何かと思ったら星野リゾートだった。これが全国のホテル旅館リゾートで名を馳せる星野かと見ながら車列をすり抜けた。別荘地が多くなるとさすが軽井沢らしい雰囲気だと思った。


            さすがに混んでいた軽井沢駅周辺


             中軽井沢に出てしまえばあとはもう考えもない。ただ国道18号を走りつつ碓氷峠を越えて横川に下りるだけだ。
             車で混雑する観光地、レンタサイクルのメッカは自転車を楽しむ人もたくさんいた。タンデム車で楽しむ人もいて長野県ならではだと思う。
             華やかな高原リゾートのなかを走っていると、やっぱりどことなく無理に放り込まれてしまったような違和感を覚えた。静かな緑のなかを淡々と進んだ二度上峠のほうが性にあっているようだ。二度上峠を上りながら感じたいろいろなことが心に刻まれる前に、北軽井沢や軽井沢の華やかな雑踏にかき消されてしまうようだった。大型観光バスの排気ガスを浴びることにうんざりしながら、二度上峠の感覚を思い出しながら軽井沢の街並みを無心で走り、そそくさと碓氷峠へ向かった。


            あとは輪行するだけ @横川駅



            | 1/1PAGES |

            PR

            calendar

            S M T W T F S
                  1
            2345678
            9101112131415
            16171819202122
            23242526272829
            30      
            << June 2013 >>

            selected entries

            categories

            archives

            recent comment

            profile

            search this site.

            others

            mobile

            qrcode

            powered

            無料ブログ作成サービス JUGEM