本日のルート
二本松駅→岳温泉→土湯→浄土平→高湯温泉→福島駅
郡山駅に着いた列車は満員だった。9時に郡山に到着する列車が2両編成じゃそりゃ混むだろと思った。扉が開き僕も流れのままに吐き出されホームに出ると、そのまま一度改札へ向かった。
きょうは輪行で二本松へ向かう。サイクリングはまず岳温泉に向かい、あだたら高原を走って土湯へ、そこからきょうの主題、磐梯吾妻スカイラインで浄土平へ向かおうというものだ。帰りは福島へ下り、JR東北本線で再び輪行する。
改札を出たのはこの駅でそばを食べようと思っていたからだ。
例によってJR東北本線の始発乗り継ぎ。まだ外の暗いうちに食パンを一枚食べてきたというものの、黒磯から郡山までの立ちっぱなしも手伝って小腹も空いていた。もっとも計画段階からこのあたりでお腹は空くだろうと想定していたし、きょうの乗り継ぎのうち郡山駅だけが20分以上あり、食べるならここしかないと調べていた。
かつてはホーム上に店を構える駅そばもあったようだが残念なことに閉店、今は改札の外にあるだけだ。
20分という時間はそうゆとりがあるわけでもない。改札を抜けたらすぐに店を見つけられたのは運が良かった。僕はかき揚げそばを頼んだ。
郡山駅改札を出たところにあるそば屋でかき揚げそば
そばは一般的な駅そばの味だと思う。おいしい。今時では珍しい量のしっかりあるそばだった。しかしそれは僕にはいささか多すぎる量でもあった。これがのちのち響くことになる。
そばを食べ終えると再び改札を入り、福島ゆきの列車が待つホームに向かった。719系の普通列車はすでにホームで待っていた。4両で運転されるようで今回は慌てなくてもゆったりと乗ることができた。
郡山ゆきの2両編成の列車には僕以外にも輪行袋をいくつも見かけた。それらの持ち主は郡山に着くと各方面に散ってしまったのだろうか。僕が乗車した福島ゆきのなかで目にしたのはひとつだけだった。
列車は20分ほどで二本松駅に着いた。9:49。今回の夏の18きっぷを利用した輪行で最も遅いスタート時刻になってしまった。サイクリングのためにずいぶん遠くまで来たものだと思った。
4時間以上かけて二本松駅に到着
駅前を出発し、僕はまず岳温泉を目指した。
国道459号であだたら高原に向かって登る道だ。
岳街道で東北自動車道を越えると岳温泉への上り坂が始まる
前日にも書いたが、実はきょうは群馬へ出向こうかと思っていたのだ。しかし天気予報を見て断念。天気のよさそうな福島県へとやってきた。そして予報のとおり、見事青空に恵まれることとなった。
岳温泉へと向かう道と青空
しばらく上り坂を無心で上り続けていると県道30号と合流し、岳温泉の街に入った。温泉は今走る国道459号沿いに広がっており、硫黄の匂いも漂っていた。大きな有名であろう温泉旅館から小さな温泉旅館まで数々存在していた。
昔ながらの国道は温泉街をきれいに貫いていることもあって、道は決して広くなかった。街の景観、雰囲気もよく、狭い道でも景色をのんびり見ながら、時には何度か立ち止まってよく見てみたり、そんなサイクリングをするのに適していた。
岳温泉の街風景
岳温泉の街を出ると国道459号はあだたら高原のなかを進む高原道路になった。さっき岳温泉で見た気温は26度だった。上り基調なので汗は出てくるが、走っていて爽快だった。空が広かった。
左手にあだたら高原スキー場が見える。それ以外で目に入るのは左右に広がる森林と、あとはひたすら広がる青い空だ。
左にそれる道に、二本松塩沢スキー場なる地元のスキー場があった。知らないだけなのだが、はじめて聞く名前だった。小さなスキー場がどんどん閉鎖していくなかで、まだやっているのだろうか。
高原道路の気持ちよさ、抜けるような青空なのに、なぜか体調が乗り切れない。郡山駅で食べたかき揚げそばでどうやら胃もたれしているようだった。かき揚げは大きくて食べ応えがあった。僕は天ぷら屋で食べるときでも空腹に任せて調子に乗るとあとで胃もたれを起こしてしまう、そんな胃の弱い人間なので揚げ物は要注意なのだ。最近はどこの駅そばもコスト抑制のためにかき揚げなんかは小さくなっているからよかったのだが、郡山駅のそれは昔ながらの大きなものだった。
気温のわりに妙に暑く感じるなとか、変に汗が出るなとか、岳温泉のあたりからずっと感じていたけれど、この胃もたれのせいなのかもしれない。
高原道路は青空が大半を占めている
道の駅つちゆの看板が見えた。
そういえばトイレに行きそびれていた。二本松駅で行っておけばよかったかなぁと出発後すぐに思ったものの、岳温泉には街中に公衆トイレがあるだろうと思っていたのに走りながらでは見つけられず、そして結局ここまできてしまった。
道の駅つちゆは国道115号との交差点にある。交差点とは言っても地形の関係もあってか国道459号とは立体交差していて、ループ状のインターチェンジのような道が取り付けられている。僕はここから国道115号に進路を取るのでその道に入り、道の駅つちゆに立ち寄った。
道の駅つちゆでソフトクリームを買った。僕が休憩でソフトクリームの類を食べるのは珍しい。もたれた胃を中和したかったのか、暑くなってしまったからだを冷やしたかったのか、そんなところだ。ソフトクリームを食べると今度はウーロン茶を探した。やっぱり胃の中の脂を分解したかったのか。しかし500mlのペットボトルを飲む気にはならず、小さいサイズのウーロン茶はなかったので仕方なくほうじ茶にした。
ほうじ茶を飲みながら周囲を見渡してみると、これから僕が行くであろうハゲ山が見えた。吾妻小富士……火山性ガスで木の生えていない山だ。
道の駅つちゆ
山ぶどうソフトクリームを食べる
道の駅から望むこれから登るべき山々
ここからは国道115号から県道30号へ進み、磐梯吾妻スカイラインの入口へ向かう。道の駅つちゆの前を通っている国道115号はいわゆるバイパスで、県道30号に向かうにはこの国道115号の旧道でもアクセスがいい。またむしろ道の雰囲気は旧道のほうがいい。
しかしながら残念なことに国道115号旧道は現在通行止めになっている。バリケードを乗り越えて、とも一瞬思ったが、先週の今週(権兵衛峠:先週、旧道経由で峠越えをもくろんだが、結局走破できずにいったん戻ってバイパスに迂回した)だったこともあり、素直にバイパスを通っていくことにした。
バイパスにかかる橋はずいぶん眺めがいいが、高所恐怖症の僕にはつらい代物でもあった。直線的に作られるバイパスは橋とトンネルで谷も山も越えていく。背筋がぞくぞくするいくつかの橋を渡ると今度はトンネルだった。トンネル内は上り基調だった。ここに限らず上りのトンネルはしんどい。先週の権兵衛トンネルもそうだった。
ひとつ目のトンネルを出ると、県道30号の分岐だった。県道30号はぐるりと今来た方向へ戻るようにループし、くぐったトンネルの上を越えていく道だった。
県道30号沿いには小さな温泉が点在していた。温泉旅館の裏では湯気が噴き出していた。
ゆっくりゆっくりと上りながら土湯峠にたどり着くと、そこが磐梯吾妻スカイラインの入口だった。
磐梯吾妻スカイライン入口
有料道路だが、現在は無料開放されている
磐梯吾妻スカイラインは、スカイラインの名にふさわしい景観に優れた道だった。ひたすら上り基調で距離も標高差もあるのでしんどいけれど、つづら折のたびに広がる各方位の眺望は展開豊かで飽きさせない。しんどければそのたびに景色を見るために止まればよいのだ。実際僕もそうやって進んだ。
ここまで上ってきた道がよく見える
湖見峠からの眺望
遠く桧原湖、小野川湖、秋元湖、猪苗代湖と見える
磐梯吾妻スカイラインは、途中眺望のためのスペースと駐車場が設けられている以外は、浄土平までのあいだ特に何もない。自転車乗りの視点で言えば、コンビニも自販機もない。実際僕も予想外に長かった浄土平までの距離でボトルのなかのドリンクを空にしてしまった。
何もないから気づかなかったのだが、バス路線もあるようだった。標高最高点近くにひとつバス停があったのでそれがわかった。バスもこの道に入るとそこまでは停まらないということだ。
標高最高点に近づくと、木のない荒涼とした山肌が見えてきた。一切経山か吾妻小富士か、いずれにしても浄土平が近いことがわかる。
磐梯吾妻スカイラインは土湯側から入ると、標高最高点を越えて少し下ってから浄土平に着く。
標高最高点と、木のない火山
浄土平に到着
ガスが噴出 何箇所も噴き出している
吾妻小富士へ上る登山道
磐梯吾妻スカイラインのなかで唯一の休憩施設でもある浄土平レストハウスは、車、バイクが大きな駐車場いっぱいに停まっていた。館内も人であふれかえっていた。自転車も数台。
時刻も13時を過ぎたし、本来ならここで昼食を取るべきだろうが、朝のかき揚げそばの影響なのかまだ食欲は沸かなかった。ソフトクリームで胃がまろやかに包まれたかほうじ茶で脂が中和されたかは知らないが、幸い胃もたれは治まっていた。上り途中ですっかり空になってしまったボトルへの補充と、この場で飲むためのドリンクを買い、吾妻小富士へ上る人の影を眺めながら休憩した。
調べてきたコースプロフィールによる限り、浄土平を出発すればゴールに置いた福島駅までひたすら下りのはずだ。二本松を出発してから浄土平までひたすら上り、上りきればただただ下り、あまりにもわかりやすいコースプロフィールだ。
浄土平を出発し下り坂に入るとものすごい光景が広がり始めた。そういえばずいぶん前にドライブでこの道を走ったことがあった。そのときも光景に驚いた記憶があったのを思い出したが、そのときは福島側から上ってくるコースを取った。きょうは逆コース、浄土平から下るコースを取ると、火山帯の中をゆく一本道が上からまるでジオラマのように眺められるのだった。
すごい光景だった。7月に行った渋峠に向かう白根山も同様で、そのときも興奮したが、今回のこの道はそれをも上回る景観だった。こんなところによく道があるなと思った。道は渋峠のときと同様、火山性ガスが危険なため駐停車禁止になっていた。
火山帯の中を貫く磐梯吾妻スカイライン
火山性ガスのため止まってはいけない
地獄それとも極楽?
草木のない白と茶だけの風景を抜けると今度は福島市内がはるか眼下に望める道になった。
本当にこの道はすごい。景色の展開がめまぐるしい。全線に渡ってスカイラインの名にふさわしい道だ。
福島市内の眺望
下りのプロフィールは本当にひたすら下りが続いた。浄土平の標高1,600mから福島市内までその標高差をひたすら下り続けるのだ。
風が冷たかった浄土平から下りてくるにつれ、標高1,200mくらいで涼しさがなくなった。700mくらいになると暑さに変わった。ひたすら下るので耳が気圧にやられた。ずいぶん街中まで下りてきた感じだった。最初の信号で止められたとき、ナビの高度は200mくらいを示していたように思う。
街に入ると急に空腹を覚えた。胃もたれも消え、いまさらな感じだった。
何だか牛丼が食べたくなった。吉野家でも松屋でもすき屋でもいい。牛丼屋の看板がないかと探しながら走った。ずいぶん駅が近くなってきたことが雰囲気でわかった。不思議なことに牛丼屋がない。なぜかファミレスがたくさんある。
ちょっと不思議だった。僕の感覚からするとファミレスは大きな国道や県道などの街道沿いにあるのが相場だと思っていたからだ。磐梯吾妻スカイラインにつながるこの県道70号は、福島駅の西口からまっすぐ伸びたいわゆる目抜き通りで、駅から広がる街にファミレスが多く点在していることに驚いた。もちろん駐車場は完備されているので自動車ユーザーをターゲットにしていることはわかるのだが、これだけ駅近くにファミレスがあることがすごいなぁと思う。
ただ残念ながら僕が今寄りたいのは牛丼屋だった。
信号の流れもよく、あれよあれよという間に福島駅西口にたどり着いてしまった。
周囲を見回してみても牛丼屋はない。仕方ないのでナビに最寄検索をさせてみた。結果、本当に駅周辺に牛丼屋はないということがわかった。最も近いところで1.3kmと出た。
結果的に言えば、ここで1.3kmの牛丼屋に行けばよかった。1.3kmなら5分程度だ。往復10分。
僕が気にしてしまったのは東北本線の列車の時刻だった。次の郡山ゆきが15時04分。この時点で14時30分を過ぎたところだったからだ。
ナビでは牛丼屋がファーストフードのカテゴリで検索されるため、一緒にマクドナルドなんかも表示された。どうやら駅にあるようだ。
それもそうだ。福島は県庁所在地で新幹線停車駅でもある。駅前や駅ビルにマクドナルドがあるのはまったく不思議じゃない。お腹が牛丼を待つモードになってしまっていたが、マックにするか。温かいコーヒーを飲むのも悪くない。
僕がいるのは西口だったが、マクドナルドは東口にあるようなので、線路を越えて反対側へ移動した。駅北側には大きな陸橋があったのでそれを渡ろうかと思ったが、その先に踏切があったのでそちらを渡ることにした。
踏切脇には福島交通の小さな駅があった。──そうそう、今回福島駅に出たら福島交通の電車も見られるといいな、と思っていたのだ。
その駅は福島駅からひとつ目、ごくごく福島から近い場所にあった。路面電車のような駅間距離。踏切から遠く目を凝らせば、福島駅の様子も見て取れた。どうやら福島交通の電車はいないようだった。残念だったがこれは時間によるものだから見られなくても仕方がない。
渡った踏切から線路沿いに進むと東口の駅前に出た。
大きな駅ビルとロータリー、駅前には目抜き通りが貫きビルが並んでいた。福島駅のメインの玄関口はこちらなのだろう。西口はおそらく新幹線に近い、新しい出入口。静岡の三島駅なんかもこんな感じだったかな、と思い出した。
福島交通曽根田駅
福島駅と福島駅前(東口)
福島交通と阿武隈急行の福島駅入口
駅前ロータリーには自転車がまったく止められていない雰囲気だったので、とりあえず輪行パックしてしまうことにした。食べることはそのあと考える。
自転車をしまい終え、さてマクドナルドはどこだと探すが見つけられなかった。駅ビルの深い奥なのだろうか、しかしながら駅ロータリーに看板すらない。駅ビル1階にドトールがあったが、外からガラス越しに見る限り席が埋まってしまっていた。スターバックスもあるようだが、2階で面倒だったのでやめてしまった。
そんなことをしているうちにあれよあれよと時間が過ぎてしまった。発車まで15分を切り、これじゃ注文してゆっくり座って食事している場合じゃないと判断して、結局ニューデイズでおにぎりを買って終わってしまった。牛丼もホットコーヒーもすっかりあきらめ、コンビニの袋を片手にすでに入線している列車に乗った。
郡山、黒磯、宇都宮と朝の逆ルートで東北本線を乗り継ぎ、帰ってきた。
家に戻り、就寝前にまどろみながらツーリングマップルを眺めてみると、磐梯吾妻スカイラインはやはりお勧めコースだった。ちなみにツーリングマップルでは関東版の限界がちょうどここ、全線見るためには東北版が必要だった。
ツーリングマップル
あだたら高原、土湯峠、磐梯吾妻スカイライン
お勧めルートが数珠繋ぎ