今回のルート
その1:平塚→大磯→(国道1号)→早川口→(国道135号)→根府川→(県道740号)→真鶴→(県道739号)→真鶴岬→真鶴→(国道135号)→熱海
国道1号ってこんなにも自転車が走ってる──。
大宮から朝一番の湘南新宿ラインに乗って降り立った平塚。下車駅が平塚なのはホリデーパスの範囲がここまでだから。来月からは休日おでかけパスになって東海道区間は広がるから平塚で降りることはなくなるかな、どうだろ。
でもいい。僕は国道1号の大磯から小田原へ向かう区間が好きだ。景色が早いテンポで展開する。大動脈国道だけに交通量は多いけれど、道幅や路肩も全般的に広めに取ってあって走りにくいってこともない。
そして花水川を越えたところで国道1号に入った僕が最初に驚いたことだった。
前にこの区間を走ったことが一度ある。そのときにこんな数の自転車とすれ違ったかな。
とにかくどんどん自転車がやってくるのだ。同じ時間帯の江戸川サイクリングロードよりも自転車とすれ違っているんじゃないか。それにここはサイクリングロードじゃない。一般道でこれだけの自転車が走っていることにびっくりだ。
しかしみんな、全然寒くないのかなあ。
それが驚きに慣れてふつうに受け入れられるようになってきたころに感じた次のことだ。僕はもう寒くて仕方がない。
朝一番の湘南新宿ラインは確か7時50分くらいに平塚に着いた。自転車を組み上げて8時過ぎに走り始めるわけだけど、こんなまだ日の高くない時間、僕は寒くて仕方がない。
脚を回すにもいろいろな関節がパキパキと音を立てるし(年だねぇ)、体も全然温まってこない。それともみんな寒いのをひたすらこらえてがんばって自転車に乗っているのだろうか。
とりあえず何か食べよう。そして温かいものを飲もう。
小田原まで行って牛丼屋にでも入ろうかな。
日曜日の朝でも国道1号はしっかりと交通量がある。
鉄道駅好きの僕としては、東海道線の大磯駅や二宮駅にいちいち立ち寄ってみたいのだけど、朝の寒さと行き交う車の交通量で気持ちが向かない。
駅舎を横目でちらりと見、立ち寄りたい気分いっぱいで通過。国府津駅なんかどんな駅だったのだろう、御殿場線も走る大きな駅だし興味もあるのだけど、「国府津駅入口」の文字を見たきりだ。
知人がテレビで見たと言っていた二宮の吾妻山公園も目で追うだけ。なんでも菜の花と遠望できる富士山との配置関係がいいといっていたけど、今朝は箱根には雪雲のような雲に覆われ、富士山にいたってはまったく姿が見えていない。だからここは行ってもしょうがないさ。
小田原まで行こうという気持ちはぜんぜん持続できなかった。もう何とかならないかと思っていたところへ現れたマクドナルドの看板に吸い込まれる。
まだ酒匂川も渡ってないし、一時間も経ってないし……。
早くも休憩@酒匂川手前のマクドナルド
ずっと小田原までトレースするように走ってきた国道1号とも早川口で別れる。
ここから海沿いの国道135号に入り、熱海へ向かう。そうそう、きょうの計画では真鶴半島にも分け入ってみようと思ってる。
道が海沿いになりさえぎるものがなくなって日が当たる。太陽もずいぶん高くなってきたようで日差しは暖かい。やっと体が寒さから解放されて楽になってきた。
それでも箱根にかかった雪雲がいたずらに張り出して太陽を隠してしまったりするので、日の照っていない間はちっとも暖かくない。
国道135号はうって変わって走りにくい。道幅も路肩も余裕がなく、しかも小田原厚木道路や西湘バイパスといった自動車専用道路からアクセスした車で交通量もどっと増えている。
イライラしながら自転車を抜かしていく車。抜かす瞬間のアクセルの踏み方でそのドライバーのイライラ度って伝わってくるようだよね。
もっとも僕も熱海までの長い間ずっとこの道路とお付き合いするのも御免なので、根府川駅手前で分離する旧国道(いまは県道740号)へ逃げる。
この旧国道はカーブが続くうえ、大きくリアスの上まで登って迂回していく道なのでさすがに車に人気がない。車で走っていると海もほとんど見えないし、道も狭い。
おかげで車から逃れた静かなサイクリングができる。ずっと大国道を走ってきた身としてはきょう初めての静かな道だ。
おまけに根府川の駅前を通る。ペダルから足を下ろすだけで駅を眺められるから僕は立ち止まって駅舎を眺めていた。そうそう、ひとつ手前の早川駅も気になったんだけど、何しろ国道135号の交通量と走りにくさで道を外れる意欲が湧かなかったよ。
さて駅に入ってくる列車も眺められたことだし、旧国道の坂を登っていこう。
──と、空から雪がどっと落ちてきた。
海側は日に照らされているというのに。気温は天気が雪になるほど低くはなさそうだから、箱根に雪を降らせている雪雲から風にあおられてこの海岸線まで雪が流れてきたのだろう。あたりが真っ白な景色に包まれる。
雪に包まれる(写真じゃほとんど見えないけれど)
入り江の奥と海岸線とをいくつものカーブでつないでいるうちに真鶴半島が見えてきた。きょうはせっかくだから行ってみようと思う。上空の風向きも変わったのか、雪もすぐに上がった。
いったん国道135号に出て真鶴の駅前に出る。西湘地区の東海道線の駅はどこも南国のイメージを湧かせる駅舎でいいなぁ、首都圏私鉄の殺風景で事務的な駅舎とは大違いだ。──と、また駅舎を眺める。まあずいぶんとコアで変わった興味分野だってわかってるから、人と一緒だったときは「ちょっと駅に立ち寄らせて!」などと言うわけにもいかない。ふつうの人にとっちゃ何で駅に寄るのかすらわからないから。自分の狭い興味欲を満たすのに自転車ひとり旅はもってこいだね。
と、わざわざ駅前に出てきたのは興味上というよりは、真鶴半島へ向かう道がこの駅前交差点からしか出ていないからだ。だから交通量の多い国道135号へ一度わざわざ出てきた。ちなみにこの現国道135号はかつての真鶴道路旧道。真鶴道路新道は確か今でも有料で、この真鶴駅の下をトンネルで一気に抜けていく道だ。現国道135号が真鶴道路旧道だったときは乗用車200円くらい徴収されていたと記憶している。
真鶴半島の道を時計回りで回っていく。
車がまだ少ない。
真鶴の駅は新道が下をトンネルで潜り抜けるくらいで、リアスの高台の上にある。そこから半島内の県道は一気に漁港まで下りきる。
道は決して広くなく、素朴な漁村の雰囲気だ。
でもお昼時になれば観光自家用車であふれる。ここを通過するなら朝方に限る。
ケープ真鶴行きの伊豆箱根バスとペースが一緒になる。僕を抜かしたバスの後ろをついていくように走る。漁港へ向かう道、この目の前のバスには乗りたくないなと思う。僕は乗り物に酔いやすく、特にバスには弱いようなので、狭いカーブの続く道を排気ブレーキとアクセルのひたすら繰り返しで右に左に走るこの運転じゃ気持ち悪くて岬まで行けないよ。
ケープ真鶴に着き、岬の突端へ出てみた。これから向かおうとする熱海の街がうっすらと見える。静岡県唯一の島、初島も見える。けれど伊豆大島は見えない。普段ならおそらく見えるのだと思うけど、きょうは朝からけむっていて遠望が利かないようだ。
真鶴駅の南国感が好き
真鶴岬から熱海
岬の芝生でひなたぼっこのネコ
真鶴からはもう国道135号を行くしかない。
湯河原手前では真鶴道路新道との合流で渋滞。湯河原の海岸線は三浦半島の津久井浜あたりに似た風景。正直走りにくい。
そして熱海へ向かう途中、また有料道路と分岐する。海岸線をゆく熱海ビーチラインとリアスの高台で越えていく国道135号だけど、ここは3分の2くらいの量の車が国道135号を選択しているように見える。やれやれ、根府川の旧国道のようなわけにはいかないや。
坂をぐんぐん登るとはるか眼下に別れた熱海ビーチラインが海岸線を行くのが見える。
でも交通量からして立ち止まって景色を楽しもうと思うところではないな。
住所が気づかぬうちに熱海市伊豆山に変わっていた。いつの間にか県境を越えたのだ。
ここからは軽い登り返しもあるものの基本的に下りながら熱海中心街へ向かう。
足湯もあったりする熱海駅前も結構魅力なのだけど、きょうはそのまま海岸まで一気に下る。
そう、きょうの目的のひとつに、熱海の洋菓子店「三木製菓」にネコの舌(=ラング・ド・シャ、そのままだね)を買いに行こうと思っていたのだ。
熱海駅への登り坂を右手に分けてさらに下ると先ほどの有料道路熱海ビーチラインと合流する。有名すぎる「貫一お宮の像」にロードバイクを立てかけ、何度も写真を撮っているオジサンに、自分じゃあそこまでできんなとうらやまし半分苦笑半分の感想を持ちつつ三木製菓へと向かった。
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