寒い寒い寒い寒い、と言っている。
気持ちだけは前向きに、天気も晴れだし、よし今週末は自転車に乗ろうと意気込んで、朝から日中出かける行き先も考えていたのに、寒い寒い寒い寒いと言ってなかなか出発できない。予想よりもずっと気温が上がってこないよ、と誰にも聞こえない心の声が邪魔をしていた。
きょうは下妻から下館に向けて走りましょう。
関東鉄道常総線にできるだけ沿いながら、沿線の素朴な風景でも堪能できれば、と思う。
関鉄沿線には何度か来たことがあるのだけど、下妻の駅に立ち寄ったのは初めてだった。
素朴だったり味わいがあったりする駅舎が多い関鉄のなかで、またずいぶんと事務的な印象の駅舎だ。
大通りもなくこじんまりとした駅前ロータリー。東西と南北に貫く国道沿いが妙に発展した下妻市から考えると市の中心駅とは思えない小ささだ。
きょうはここから出発。
ちょっと事務的な感じの下妻駅の駅舎
改札口からホームを覗いてみた
──実はと言うと、本当はここ下妻から真壁にでも抜け、筑波山をまたいで石岡に出ようかと考えていた。それが朝のコースだった。
それなのに朝、からだがなかなか出発してくれず自宅の越谷を出たときにはすでに10時過ぎ。ここ下妻駅に着いてもう13時近くなってしまっていた。加えてここまで走ってくるうちに何だかあっという間にくたびれてしまって、時間的に石岡に15時の電車に間に合わそうと言う気力がなくなってしまったのだ。
だめだなあ……。
下妻の町に入るころに時間を計算し始め、あれあれあれ?と思う。駅に着くころにはすでに行き先を変えることを決めていた。
ま、寒いしね。
(だめだなあ……。)
さあ、線路に沿って出発。
走っているとときおり関鉄のキハがやってくる。
空は青い 一両の列車はのどかにゆく
下妻からほんの少しの間線路沿いを走っていたのだけれど、そのうち道が見つけられなくなり、平行する県道357号線をゆく。県道とは言ってもさらに平行する国道294号の旧道で、現在の国道がバイパスとして完成した際に県道に格下げになった道だ。なので道幅が狭い割りに交通量が多く、大型車も頻繁に抜かしていくことからあまり楽しくはない。
騰波ノ江(とばのえ:読めないなあ)の駅の入口を見つけたので立ち寄ってみることにした。
ぽつんと瓦屋根の駅舎が。
床屋のくるくるがあるのは駅前すぐに床屋があるから。それ以外は何もない。駅舎からおじさんが出てきてかたわらにあるトイレに用を足しに行った。
いい雰囲気だ。僕も自転車をいったん止めて用もないのに駅舎の待合ベンチに腰を下ろしてみた。
帰ってから知ったが、関東の駅百選に選ばれた駅だそうだ。
列車はしばらく来ない。僕は席を立ち再び自転車に乗る。
線路沿いに向かう細い小道を見つけたので行ってみることにする。
静かでひと気もほとんどないとばのえ駅
小道へ向かう入口 トマレ チウイ
すぐに突き当たる線路に近い小道をあみだくじのようにすすむ。
途中多くの人数で保線作業をやっていた。線路際には真新しい枕木が置かれ、交換して路盤整備をしているのだろうか。列車が行きかう合間を縫っての作業なのか、大変だ。
線路沿いを流していると踏切が鳴る。
ああまたやってくるなあと線路の遠くを眺めていると、いつも走る関鉄の車両の塗装とは違うタラコ色のキハが目に写った。僕は嬉しくなって自転車を放り出すように飛び降りカメラを構えた。旧国鉄の車両で、川越線なんかを走っていたものだ。いち時期は関鉄カラーに塗られてもいたけど、ここ数年旧国鉄のカラーを身にまとっている。
古い車両とはいえノロノロ走っているわけではない。さっさと僕の前を通り過ぎて行ってしまった。
旧国鉄キハ30だった101型
あみだくじを続けているうちに次の駅黒子に着いた。またここでも自転車を下りていちいち立ち寄ってみる。
ここの駅舎もまた真新しい。立て替えられた当初から無人駅の想定だったのだろう、駅業務を行えるような建屋にはなっていなかった。駅舎が新たに建て替えられてしまったおかげで、周辺の昭和時代の面影を色濃く残す家や商店から駅舎だけがいびつに一歩抜け出してしまったようだ。
真新しい駅舎と古くからある商店 駅前ロータリーの異色コントラスト
平行して走っている県道357号がまた鉄道のそばにやっていた。
ここからはまたこの県道に乗っていく。
関鉄常総線は下館までの間にあとひと駅あるが、少し西に回り込んでいってしまうのでパス。この県道357号をそのまま走っていれば下館の駅前にそのまま着けることを確認したので、県道で出発する。
ひざが痛くなってきた。
最近寒いを理由に乗らない機会が減っているからかなあ。脚がきれいに動かないのだろうか。
寒さと風で体が動かないのかな。
県道は駅前にそのまま入っていく。
もともとは国道としてそうだったのだろうけど、バイパスができて駅から少し離れた西側でJR水戸線をオーバークロスしていく。
──ここ、通ったことあったかな。
どうも定かではないのだけどここと同じ道の構成を通った記憶の断片が記憶の片隅から出てきたのだ。
でも違うかもしれない。同じような道路構造が、同じJR水戸線で岩瀬や結城でも見たことがあるような気がする。
バイパスでできた国道を直進で横断し町中へ入っていく。
ちらほらと大きなショッピングセンターのビルも現れたり県道周辺はにわかに町の様相を呈してきた。
そのまま進むと線路にぶつかった。ここが駅だった。
ここで終わり。──と思ったが、県道でそのまま行き着いた南側の出入口はどうやら関東鉄道がやっている駅のようだ。
僕はここからJRで輪行して帰るから、しょうがないなと北口へ回り込む。
手近な踏切を渡る。
大きな踏切だ。何しろJR水戸線と関東鉄道常総線、それから真岡鉄道の三路線が集まる駅なのだ。踏切を渡りながら線路の複雑な配線を眺めた。
そして北口に到着。きょうはここで終わりとしよう。そういえばきょうはまだ昼食をいっさい食べていなかった。何か食べようか。駅前の大きなビルの周辺に少し目を凝らしてみたが、食べ物屋があるのかないのかよくわからなかった。JR水戸線の時間まで15分程度なのであきらめることにし、あわただしく自転車をパッキングして駅横にあったNEWDAYSでおにぎりを買った。
早く暖かくならないかな。
南口 関東鉄道の文字が刻まれている
踏切から見た複雑な配線 三路線が交わるターミナルで
北口 JRの文字 何のことはない改札内は互いに行き来可能だった
思い返せば今年に入って初めての輪行だ
きょうのコース