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    • 2017.12.04 Monday
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    西上州曇天雨天

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      (地図)


       何週、週末の雨予報が続いただろう。
       もちろん予報は雨だけど降らないときもあった。浜松の鉄道旅をしたときや、富士山を見に新道峠に輪行で向かったときだ。それ以外にも自転車に乗ることができたり出かけることができたりする日もあったかもしれない。でも結果的には雨の予報や降水確率を見て、ときには朝の空模様を見てあきらめる日が何回も続いている。
       週間予報はこの一週間めまぐるしく変わった。
       土曜日は雨の予報がまず出て、日が経つにつれ降水確率が上がった。かと思えば週の中ごろを過ぎると晴れマークの付く天気予報も現れた。僕は行けそうな場所、雨に降られなさそうな場所を見つけて出かけるつもりになっていた。

       輪行が多い僕だけど、この日は車を用意した。
       もし雨に降られたとき、身体がずぶ濡れの状態で電車に乗るのはいかばかりか気が引ける。もちろん結果的に降られてしまって濡れた身体で乗ることがなくはないけれど、できれば避けたいと思っている。その点車ならどれだけ濡れようとかまわない。
       変化の多い天気予報を見つつ僕はいくつかのルートを引いた。神奈川、栃木、群馬。木曜日、金曜日の天気予報を追いかけると、関東は一円あまり変わらないように見えた。曇りときどき晴れの予報あるいは曇りときどき雨の予報。天気予報ごとに出す予報は異なれど、その予報のなかで地域による予報差はほとんどなかった。
       僕はそのなかから神奈川のルートを選択した。小田原から大雄山や足柄をめぐってくるルートだ。箱根の至近ながらまったく足を踏み入れたことのないエリア。日が近づくにつれ僕は興味を強くしていった。
       しかし土曜日の朝、ニュースのなかで気象予報士は「太平洋岸ほど雨が降りやすいでしょう」と告げた。時間別天気での小田原は終日、傘のマークが現れていた。曇りのマークが続くのは群馬や栃木の北関東だった。
       そんなわけで僕は甘楽町の道の駅にいた。
       まだひと気も少なくひっそりとしたそこは、やはり厚い雲に覆われていた。北関東とはいえ朝の予報では午後3時以降は傘マークが並んでいた。今は朝8時半。これから6時間を楽しむことにしよう。
       とはいうものの、熱心に計画を立てたルートではなかった。目新しさはない。富岡から松井田に抜け、横川を経て碓氷峠を上る。軽井沢でお昼ごろだろうか。帰路は和美(わみ)峠から下って下仁田に下りる。とりあえず西上州を走るなら、という程度。ここに来てからもう少し事前に情報収集しておけばと思った。
       富岡製糸場の前を通った。入り口に向かって行列ができていた。9時開場、その前から楽しみにしている人が並んでいた。富岡はいい街並みをつくっている。ここを通るとつい立ち止まる。富岡製糸場への興味はそれほど強くないけれど、富岡の街はいい。ここで少しのんびりしてみたいと思う。思うのだけどいつも忘れてしまう。まだ開いていない喫茶店を気にしながら通過して、僕はそのまま松井田へ向かった。
       国道18号と国道254号のあいだ、鉄道でいうと信越本線と上信電鉄とのあいだには妙義山から東へ延びる丘陵部がある。下仁田から松井田に抜けるにしても、富岡から松井田や安中に抜けるにしても、吉井から同じように安中に向かってもこの丘陵部を越えなくちゃならない。標高は高くないけれど、急な坂や上り返しもあったりして意外に疲れる。あわてずゆっくり坂を上りながら西を見ると、雲のなかにすっかり隠れてしまった妙義山の裾野だけが目に入った。

       横川のおぎのやドライブインの前で缶コーヒーを買い、ベンチに座って休憩した。国道18号はこの空模様にもかかわらず交通量が多く、みな軽井沢へ向けて坂を上って行った。
      「これから碓氷峠に上るの?」
       革ジャンに身を包んだ、僕より15歳は上だろうか、男性の三人組がバイクを止めて僕に声をかけた。
      「はい、今からです」
      「大変だ」
       とひとりが言う。
      「でも、自転車で坂を上るの好きな人も多いっていうよ。明日は赤城山を封鎖して自転車で山を上るレースをするんだと」
       と仲間が言う。
      「へえ」
       そんな会話を仲間内でしている。僕は笑って聞いている。
       僕がベンチを立ち空き缶を捨てると、気をつけてなあと声がかかる。僕もお互いにと声をかけた。

       国道18号旧道は雨こそ降っていないものの路面は濡れ気味で、空気が身体にのしかかるような重みを感じた。坂本宿を抜け、峠への坂道になる。道は森へ分け入り、路面はついさっきまで雨が降っていたのではないかと思うほど濡れていた。ずっと降り続く長雨のせいなのだろうか、国道18号の路面をまるで洗い越しのように水の流れが何箇所も横断していた。
       旧信越本線のめがね橋で自転車を止め下から眺めていると、そこへ先ほどのバイクおじさん三人組が追いついてきた。「やあ」と言う。「お疲れさまです」と僕は返した。
       空腹を感じてバッグに入れてきた蒸しパンを口に放り込んだ。それから再び碓氷峠に向かって出発。バイクおじさん三人組はめがね橋のうえへ散策しに行ったようだ。
       国道18号旧道には、カーブごとに1番から順に番号が振ってあり、確か184まであるはず。途方もない数だ。そんなに上らないと着かないのかといつも驚く。しかしそのぶん傾斜はきつくない。名のある峠でここまで勾配が緩いのはあまりないように思う。
       傾斜がきつくてもいいから短い距離で越えてしまいたいと言う人もいる。逆に距離は時間をかければ堪えられるから傾斜は楽なほうがいいと言う人もいる。人それぞれだ。僕はどっちだ? ──そう言えば考えたことがなかった。
       道路距離は長いものの峠までの直線距離がそれほどあるわけじゃないので、道はつづら折りで距離と標高を稼いでいく。右に曲がると左、曲がるとまた右。直線はほとんどなくてめまぐるしい。後ろから3台のバイクがやって来て僕を追い越していった。手を挙げて次のカーブヘ入っていく。僕も手を振りかえした。彼らはすぐに次のカーブで見えなくなった。

       国道18号旧道が坂を上り切るその場所に「長野県軽井沢町」の案内標識があらわれた。カーブは184まであったっけ──すべてを見ていたわけじゃないからわからないけれど上り切った。空は厚い雲に覆われるどころか、霧に覆われたように白んでいる。松井田で見た妙義山を思い出した。ここは雲のなかなのかもしれない。
       下りに入り始めてすぐ、国道18号旧道を離れて旧軽井沢の別荘群の道を選んだ。最も軽井沢らしい風景、そうここで書きながら避暑地の風景を楽しみたいところだったけれど、雲のなかは細かい霧雨に包まれていた。身体は徐々に濡れていくようで、それよりなにより県境を越えたら空気まで入れ替わったかのように寒かった。
       たまらず、軽井沢銀座には向かわず、大通りを駅に向かった。引いてきたルートではここから軽井沢銀座を散策ののち、中軽井沢に向けて別荘群やホテルのなかを抜ける小道を走ろうとしていた。でもそれを続けられないほど、あっというまに身体が冷えた。そして身体が求めるまま駅近くのそば屋に入り、あたたかい月見そばを食べた。

      「軽井沢ってところは特別寒いんだよ」
       おはぎを食べながら僕が軽井沢から下ってきたことを話すと、和菓子屋の主人はそう言った。
      「ここや松井田と比べると標高が全然違うけど、佐久なんかと比べても格段に寒いんだよね。空気が違うと言うか」
       僕はへえと言う。
       軽井沢でそばを食べ終えた僕は、久しぶりの軽井沢で散策をする気も起きず、ウィンドブレーカーを着こんで早々と出発した。ずっと霧雨にさらされているような状況のなか、プリンス前から南軽井沢を経て和美峠へ出た。
       10年以上使っているウィンドブレーカーは自転車用でも何でもなく、はっ水効果はもう完全に失われていた。霧雨はウィンドブレーカーを通過して僕の身体を濡らしていた。
       そんな天気だから和美峠からの下りは路面がしっかり濡れていた。急坂の続く下りを慎重に進み、上州姫街道の本宿(下仁田町)まで下ってきた。本宿の町ではまだ降り出していないのか、路面が乾いていた。
       本宿は今、上州姫街道の県道がバイパスとなって、旧道沿いにぽつんと残っていた。静かに、でもしっかり根付いた町があった。おはぎの文字につられ、僕は和菓子屋へ入った。
      「昔はこの町のなかにも映画館があったくらいだから」
       和菓子屋の主人は言った。
       かつては軽井沢へ向かう車で渋滞がひどかったと言う。街道のバイパスとして県道が川むこうを大きく迂回して通るようになると車はそちらヘまわり、町は落ち着いた。やがて上信越道が開通すると、下仁田から和美峠経由で軽井沢へ向かう人はいなくなり、町全体が静かになった。
      「ここにいても今は仕事がないから、若い人はどんどん都会へ出ていくからね。ずいぶん人も減ったよ」
       話し込んでいるあいだに窓の外に篠突く雨が落ちているのが見えた。さっきまで雨の気配はなかったのに。
       それにしても今日いちばんの雨だ。時間は午後2時半過ぎ。僕はとどまることより進むことを選択し、ごちそうさまでしたと店を辞した。
       5分も走るとヘルメットから水滴がしたたり始めた。車で来ているがゆえどうしたって甘楽まで戻らなきゃならない。20キロ前後あるはずだ。
       僕は下仁田の町なかまで下りてくると、駅に寄ってみた。サイクルトレインが走っているのでは? と思ったからだ。駅に自転車を立てかけ、ヘルメットを外して改札に立つ駅員に聞いてみた。
      「もう終わっちゃったんじゃないかなあ……」駅員は時間を確認する。「もう自転車を乗せられる電車は終わっちゃいましたね」
       時計は3時過ぎ。
       天気予報は大当たりだった。

       僕は駅員にありがとうございますと礼を言い、雨をあきらめて国道254号を走った。



      (道の駅甘楽)




      (富岡の町風景)



      (めがね橋)



      (軽井沢駅前通り)



      (上州姫街道・本宿の街なみ)

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