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    • 2017.12.04 Monday
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    ドンベイ峠、新道峠、旧芦川村 (その1)

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       およそ一週間前に手にした「日本の風景」とかいう書籍でその名を知った新道峠と、そこから見た富士。いよいよ峠に立った今、富士は雲に隠れてその姿を見せてくれなかった。

      ***


       ページをめくっていってあらわれた新道峠からの写真は、その風景バランスに強く惹かれた。結果的には構図と言っていい。自然の位置関係が作り上げる、絶妙の構図だ。──豊かに水をたたえた河口湖とその右手正面に雄々しい大きな独立峰が、互いに前ヘ前ヘと圧倒しあうように並んでいる。本来あるべき遠近感さえ失って見えた。
       僕は早速手持ちのツーリングマップルを開いて見た。しかしその書籍の略地図とツーリングマップルが上手く照合できない。悩みながらネットで地図をスクロールしていくと、手持ちのツーリングマップルが古すぎて、河口湖から北西へと延びる県道719号が開通以前で見る影もなかっただけだった。道路としてつながった県道719号と御坂みち(国道137号)を結ぶ林道を見つけ、新道峠の場所を確認するとこの場所への強い興味を覚えた。


      (本で見た新道峠)


       沸き立った興味のまま僕はUさんに連絡をした。Uさんなら僕の興奮に共感してくれるに違いないと勝手に思い込み、そのページを写真に撮って添付した。ほどなく、Uさんは自身で持っているサイクル・ツーリストという書籍の峠百選を見て、「載っていました」と送り返してきてくれた。Uさんもノーマーク、書籍のページを知らず知らずに読み飛ばしていたようだった。
       僕はネットで情報を集めながらルートをいくつか準備した。情報は多くない。しかしながらここを好んで訪れている人はいて、その良さが伝わってくる。得られたのは、御坂みち側から入ると新道峠に至る手前に日向坂峠(ひなたざかとうげ、通称のドンベイ峠のほうが名の通りがいいらしい)があること、新道峠は最後まで道が続いていないので、自転車を置き10分程度歩く必要があること、西に下りた旧芦川村(現笛吹市芦川町)は古き生活が息づいていて、かつて養蚕が盛んだったころの「かぶと造り」という独特の屋根を載せた家々がそのまま残っており原風景の味わいが深いことなど。そんなことからドンベイ峠、新道峠、芦川村を組むルートをいくつかUさんに見せた。




      ***


       中央本線の甲斐大和駅に降りると、すでにUさんは自転車の準備を終えてベンチに腰を下ろしていた。一本前の列車で来たらしい。一本と言ったってここの列車は間隔が30分以上ゆうに開く。申し訳ないことをしたと思う。
       御坂みちへ向かうルートを直線的にするなら石和温泉スタートなのだろうけど、この国道137号は交通量が多く大型車も脇を抜けていくような道は最小限にしたかった。それを大きな建前に、中央本線が笹子越えで稼いでくれた標高をみすみす捨てたくない、上りを極力少なくしたいという本音を加味した甲斐大和スタートのルートだ。御坂峠に行ったときもここが起点だった。
       たくさんの登山客に混じって改札を出る。ここは大菩薩嶺周辺の登山のアプローチ駅で、特急通過駅でもあるから普通列車が着くとそれに乗ってやってきたたくさんの登山客が降りる。改札の外ではゴルフ場の送迎のようにバス会社の運転手が迎える。みなマイクロバスや大型ワゴンに案内される。僕が自転車を組むあいだに駅前はすっかりひと気もなくなって静かになっていた。

       御坂みちを行くあいだ、蒸し暑くてけだるくて仕方がなかった。気温は上がっているものの道端の気温表示では30度に満たない。とすると湿度が高いのか。汗が流れ、日陰を見つけては小休止をはさんだ。リニアモーターカーの高架線の影でも休んだ。緑の山あいのなかを貫ぐさまは未来都市のようだった。子供のころの絵本に描かれた都市は透明なチューブのなかを車が走ったりしていましたよね、とUさんと話す。まさにそんな光景だった。


      (甲斐大和駅から久しぶりのUさんとのサイクリング)


      (御坂の山あいを貫くリニア)


       林道は、蕪入沢上芦川林道と言った。
       直前に通り過ぎた台風13号で、県はおとといまで通行規制を出していた道だ。昨日になってそれは解除され、僕の引いたルートは面目が保たれた。
       国道137号御坂みちから分ける道ながら、かつてそうしていたように地図でその分岐を探していたら見つけられなかった気がする。今は現在地を示すGPSマップがハンドル上にあるから本当に便利だ。それでもここかな? と何度か疑問を持ちながら林道に入った。
       林道に入ると途端に涼しさを覚えた。
       道を取り囲む木々によって強い日差しはさえぎられ、風も変わった気がした。なにより大型車も多く含む国道137号の交通量から変わって車がまったく通らないこともそう感じさせた。
       坂はときに急で、ただでさえゆっくり上って行く僕らを苦しめた。距離も長い林道だった。直登するところもあればつづら折りで上って行く箇所もあった。直登は斜度がきつかったし、つづら折りも曲がれど曲がれど休めるような平地が現れなかった。むかしだったら気持ちが途切れていたかもしれない。今はいい。経験値が上がったこともあるけれど、GPSマップで今がどこか先がどうなっているかがわかるようになったから。
       適度に休憩をはさみ、途中で持ってきていた食べ物も食べた。僕は林道の長さを考えておにぎりふたつとゼリー系飲料を持ってきていたが、それはその場でなくなってしまった。林道沿いに電気の来ていない場所だからコンビニや商店はおろか、自販機さえない。林道はたいていどこもそうだ。食べ終えて少し休息をとりそしてまた上る。僕は眠くなった。自転車に乗っていて眠くなることがある。でもたいていは食事を摂ったあとの下りだ。上り坂で眠くなるなんてありえない。眠気は波のように襲い、ときどき意識が飛んだ。ガードレールがない場所のほうが多い林道だけに僕はUさんに眠気を伝え休憩させてもらった。体調管理が行き届いていないわけで申し訳なかった。でもUさんは快く休憩に応じてくれた。少し眠るといいですよと言ってくれた。僕は自転車を置き、車もまったく走らない、鳥や虫の声もほとんどない、風の流れる音だけがする林道で、草の生えた山の斜面を背もたれにして路面に座って目を閉じた。これだけの往来の少ない道、野生動物の出現を危惧するなら昼寝などひとりでは到底できることじゃない。Uさんに感謝しつつ、とてもぜい沢な時間を過ごした。
       結局すれ違い追い越されたのは車が2台、二輪が2台だった。2時間半以上走り続けたなかでその程度しかない往来だった。道端には落石注意の標識がいくつもあり、路面に崩れ出した土砂や落ちてきて割れたような岩を見ていると、冗談で掲示しているんじゃないぞとでも言う真剣さが伝わってきた。上り坂でスピードなんて出せやしないから、いつも山の斜面の上に異変がないか気をつかった。

       標高1500メートルを越え下りに転じようとした場所には何もなかった。「ここが峠ですかね」と僕が聞き、「わからないですね、何もなくて」とUさんが言う。念のため写真にだけ収めた。それから坂を下り、また上りをくり返して標高を少し下げた箇所に登山道との交差箇所があった。そこで止まって振り返ってみると「ドンベイ峠」の看板があった。「ここでしたか」と僕は言った。「ここでしたね」とUさんが言った。


      (今日のメインテーマ、蕪入沢上芦川林道)


      (直登区間の急坂を上る)


      (休憩をし、手持ちの食事を食べ、昼寝をする)


      (ときおり甲府盆地が望める)


      (全般的に落石が多い)


      (到着したドンベイ峠)

       下り坂をさらに進んだ。途中で路面がセメント舗装になり、それがやがてセメントのひび割れた路面に変わった。最後はまるで石畳のようだった。あるいは石畳だったのかもしれない。まるで岩を土のなかに埋め込んだようでさえあった。まったくスピードが出せない。激しい振動のなかブレーキを握りっぱなしで手が痛い。まったく快適じゃない下り道だ。
       新道峠に向かう林道との三差路に出た。峠から100メートルばかり下ってきた。


      (セメントひび割れ舗装や石畳のような下り坂)


      (新道峠への分岐)


       分岐から再び100メートルばかり上る。2、3キロくらいだろうか。林道は行き止まりになる。車が3台ばかり止まっていた。自転車をガードレールにくくり付け、あとは登山道。いよいよ新道峠へ向かう。
       登山道の階段状のステップは驚いたことに枕木を使っていた。丸太が使われることの多い登山道のステップなのに驚いた。しかも狭い登山道に収まる幅はおそらくナローゲージの特殊なものだった。鉄道の線路だろうか、あるいはどこかトロッコのような簡易軌道――たとえば鉱山や林業の運び出しのための──だろうか。上を向いている面がどこかにもよるが、大釘を差していた痕跡らしきものもあった。

       もともと朝から山の上には雲がかかって見えていたのだ。
       だから目的の富士山が雲に隠れていても不思議ではなかった。
       それでも雲におおわれた富士山を想像し、風景を眺めることは残念だった。とても楽しみにしてきたから。
       ちょうど富士山にだけ雲がかかっている。ふもとの河口湖はまるで手の届きそうな眼下に見えている。左の奥に山中湖が見える。それぞれの湖の標高差はおよそ150メートル。その標高差を見事なまでに表現した精巧なジオラマを見ているようだった。
      「今日は朝からこの状態だよ」そう、登山道を通りかかった夫婦が言った。どこから来たのか、甲斐大和の駅から、あの道を自転車で?そんな自転車に乗っているとよく交わされる典型的な会話をする。そしてまた富士山の話題──それはまるで、見える機会のほうが少ないのだよと言わんばかりでもあった。
      富士の裾野には演習場が見える。その稜線がやがて放物線を描き
      始めるあたりから、雲がきれいに覆っていた。


      (登山道をゆく)


      (眺望を楽しむ場所はニカ所あるよう)


      (第二からの眺め)


      (第一からの眺め)



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