今まで日光という場所には輪行でしか出かけたことがなかった。
東武線の下り始発列車に乗り、乗り継ぎをくり返す。そのあとを追いかけてくる浅草から一気に日光まで運んでくれる快速はたいてい混んでいるし、僕は始発乗り継ぎのほうを好んで使う。これで行って日光に7時半過ぎ。いろは坂を上って中禅寺湖を望むのは9時半とか10時だ。
千手ヶ浜は中禅寺湖の西にある静かな浜で、かつての林道が日光市道になってから車は入れなくなり、もともとどこにも抜けられない道の果てにあった浜はさらに閉塞感が強くなった。有数の観光地、奥日光中禅寺湖畔とは思えない静かな浜がそこにある。
道は国道120号赤沼茶屋の近くから小田代ヶ原をかすめ、大きく迂回するように中禅寺湖西岸に着く。今は国道120号からの入り口に大きな鉄のゲートが設けられ、このなかへ入っていけるのは市の運行する低公害バスと歩行者、自転車のみだ。
今日は車でここへやって来た。まだ夜が明けぬ4時に家を出発、戦場ヶ原の三本松茶屋に車を置き、いろは坂はスキップした。おかげで市道1002号のゲートに立ったのが7時半だ。
東武電車もまだ一本も着いていない。日光駅からの路線バスは走り始めているようだけど、この時間はガラガラだ。そしてこのゲートを越える低公害バスは1便が8時過ぎのはず。
朝の雰囲気は輪行で来られる時間とは違っていた。
この道は季節を問わずドラマチック。ふだん味わえないサイクリングになる。小田代ヶ原を経て弓張峠を越え、下る。さっき車で眺めた中禅寺湖とは違う、幻想的な中禅寺湖が僕を迎えた。
(赤沼茶屋近くの入りロゲート)
(日光市道1002号は映画のセットのよう)
(小田代ヶ原も草原化が進みもう湿原の趣はない)
(中禅寺湖に向かう沢に沿ってクリンソウが咲く)
(沢は冬の雪が少なかったせいか枯れぎみ)
(日光市道1002号を往復する低公害バス)
(千手ヶ浜)
今回、スニーカーを別に持ってきた。自転車を置いて西ノ湖にも行ってみようと思う。
熊鈴は持っていない。あったほうがいいかなって思うような場所。でもほかにも歩いている人がいるから──きわめて少ないけれど──大丈夫かなって思い歩く。
周囲から隔離された空間に現れた湖は神秘的だった。
でも、開けたこの空間一帯、水よりも砂地のほうが広かった。
もしかしたらここは何色にも映る水に満たされた地なんじゃないかと想像する。裏磐梯の五色沼、あるいは白神山地の青池──それらよりも訪れる人は少ないかもしれない。車ではここへ来ることができないのだから。
砂地で広がった一帯は荒涼としている。水が枯れているのだ。一帯を歩きまわっていると古くからの地図があった。見ると西ノ湖につながる川がある。流入河川か流出河川かはわからない。湖の周囲、砂地のうえを歩きまわってみたけれどそんな河川はなかった。ただ、森のなかから続いてくるヘビのような筋が見えるだけだった。おそらく河川の痕跡だ。
この冬が、きわめて雪が少なかったから? それとも、湿原からほぼ草原に変わった小田代ヶ原のように周辺の沢も枯れはじめているから?
このふさがれた空間に広がるように存在する湖は、あるいは枯れ果ててすべて砂地になったりしてしまうだろうか。
(西ノ湖への道)
(西ノ湖)
25キロのサイクリング。森の空気を全身に浴びて昼には駐車場に戻った。さあ、いろは坂や神橋、東照宮が混み始める前に帰ろう。
まだ行ったことないんですよね。
戦場ヶ原はどちら方向から来ても、ついつい先を急いでここは素通りしてしまいます(^_^;
せっかくゲートの中に入れる自転車の特権なので、いつかは走ってみたいものです。