僕は自転車に対する物欲があまりない。少ない。たぶん、自転車を趣味とする人のなかでは異端だと思う。
新しい自転車が欲しいという気持ちもなければ、より高級なパーツを入れたいという気もない。
残念ながら趣味に没頭できるだけの実入りがないという物理的な事実がありながらも、加えてレースやイベントといった類に関心がないからだと思う。結果的に速く走る必要がないし長い距離を走り切る義務もない。そうなればより速く走るためのパーツや楽に長距離を走るためのパーツなどとは縁遠くなる。
以前は新しい自転車が欲しくてたまらなかったときもあったし、パーツやアクセサリーに心躍っていた。
そうなると雑誌も読むし、情報収集もする。
物欲の収束と同時に、雑誌も手にしなくなり情報からも縁遠くなった。
とはいえ電動だ11速だと話が進化しているのはなんとなく知っている。知っているだけで僕との距離感がわかっていないのも事実。
今の僕の自転車は5600系105で組まれているけれど、105は今や5700系となり(これもかなり前だ)、ブレーキなどは互換性もないらしい。上のグレードにしたいという気もないのに加え、同等でも新しいパーツにしたいという気もない。だからきっと5600系の部品供給が終わったときにあわてて情報収集し始めるのだろう。
唯一、去年興味を覚えた情報がクラリスというシリーズコンポだった。
シマノのロード系最下級に位置するグレードで、いわゆる2000系。これまでは愛称が付けられることなく2200、2300とその系列番号でだけ呼ばれてきた。
低価格の完成車に組み込まれるだけのコンポで、部品として購入して組み込む人はほとんどいないんじゃないだろうかと思う。自転車屋で「2300のでいいんだけど」と言って買い物をしようとすると一瞬の間とともに苦笑いをされるのだ。在庫として置いておいたところでパーツは売れることがないから、取り寄せるだけ店は手間なのだろう。
クラリスは取り残された8速コンポ。これまで名の付けられたコンポの最下位ランクとされてきたsoraだっていまや9速、通販サイトに載せられた激安ロードの24段変速と書かれた諸元を見てああクラリスなのかなどと気づく。細かなパーツごとの諸元が記載されるような自転車にはクラリスは登場しない。
8速──うちにかつてのsoraで組まれた自転車がある。妻が年に数回乗ろうかという意思を見せたときだけ出てくる。ときどき、ためしに僕が乗る。
この自転車、部品が安いので助かる。8速用のチェーン、8速用のスプロケット……10速用と比べればときに倍の差だ。それ以外の部品も、前後ディレーラー、クランク、BB、STIもみな。
調整だってしやすい。soraは調整が決まらないとかまれに目にすることがあるけれど、そんなことはない。自転車屋で僕の自転車が変速不良になり悩んで相談したときに、「105はこんなもの。きっちり調整を決めたければアルテグラ以上でないと」などというビックリ発言をされ、そのまま興醒めをして帰ったが、これがsoraやクラリスだったらどう言われたのだろうと思うとぞっとする。
soraだろうがクラリスだろうがきちんと調整すればきちんと決まる。それがシマノの製品だ。グレードによる優劣はレスポンスや無理な操作(たとえば強いトルク中の変速とか)への適応だと思う。レースには重要だけどサイクリングしかしない僕には無関係。
8速だときちんと調整しておけば出先で多少の障害があっても動けなくならない。スプロケの歯を例にするのもなんだけど一枚一枚の可動範囲にゆとりがあるから多少ずれたって問題ないということが全般に言える。
チェーンだってママチャリなんかに使われているZチェーンすらも使える。切れることってそうそうないかもしれないけれど、10速チェーンだったらそこにスポーツサイクルショップがなければ出先ではなかなか手に入らない。
そんなことを考えていたら、今の5600の部品が手に入りにくくなったらいっそ、8速のクラリスに載せ換えてしまおうかななどと思ったり(笑)。
こちらは今9速の自転車に乗っていますが、次は8速に載せ替えようと考えています。レースはしませんし、仰るように出先で替えチェーンを入手しやすいのは魅力的に思えるので。