小湊鉄道の列車はまわりの雰囲気によく溶け込むなぁと思う。かつての国鉄の気動車もこういった塗色だった。ただの個人的な感性でしかないだろうけど、この色の列車が緑に覆われた風景のなかを進んでいく光景が好きだ。気動車だから架線もなくただ車両だけが緑のなかに浮かび上がる。
そんなことを思いながら、養老渓谷の駅でしばらく小湊鉄道の列車を眺めていた。
今日は大福山、音信山といった場所を南北につなぐ林道をめぐろうと思ってやってきた。
もう少し朝からきちんと計画していれば、JR久留里線の久留里あたりから上総亀山に抜け、亀山湖の先から養老渓谷駅に向かう林道から始められた。昨日タイヤを交換したばかりだったし、確認と慣らしでふつうの国道を走ることから始めるのがいいと思っていた。とはいえ時間別天気と常ににらめっこをして行き先や出る時間を決めることが多いこの梅雨時はどうしたって出が鈍るのは仕方ない(ということにする)。
養老渓谷駅に停泊中の小湊鉄道
林道めぐりの始まり
今日ここへやってきたのは、このあたりの林道がツーリングマップル上紫色に塗られていたから(ツーリングマップルでのおすすめルート)。房総半島には林道が多く張りめぐらされ、またいい場所を通るものだから魅了してやまない。もともと県道や国道ですらもなぜか規格の低い道が多く、走ることを楽しめる道の選択に悩むほどだが、林道も同様だ。そして今日の林道は複数の林道の組み合わせながら長い距離をつないでいくことができる。
おまけに全面舗装だ。ロードに乗るようになった今でもやっぱり林道には行きたいので、走る不安の少ない舗装路はありがたい。とはいえ未舗装路が現れてもあまりためらわずにがんがん入っていってしまうのだけど。
まずは大福山へと向かった。
大福山へ向かう道が果たして何林道なのかよくわかっていなかった。女ヶ原林道かと思っていたけれど入口に立てられていた標識には朝生原林道と書いてあった。まあ厳密なところはどうでもいい。人に話すような機会があれば道の名前がわからないのは何かと不自由するが、ここなら養老渓谷から大福山へ上って行く林道、で通じるように思う。
途中、加茂林道を分岐したあたりから勾配がきつくなった。
梅雨時で湿った路面、時おりコケの生えた箇所もあり滑らないように進む。
10分程度走っただけですっかり緑に覆われた。ぽつりぽつりと住宅もあるけれど、ひたすら森林のなかをゆく。ちらりと見える周りの山の稜線も森林の緑に覆われていた。あと、竹が多いのも房総の特徴のひとつだと思う。
大福山のピークらしきところではちょっとした展望台があった。車も何台か置けるスペースがあったけれど、そのスペースも展望台もたいして広くはなかったので立ち寄らなかった。緑の稜線ばかりでどちらの方角を向いているのかもいまひとつぴんと来なかった。
そこを過ぎると道は下りに転じたが、すぐに大福山林道との交点に出た。
薄暗い森のなか
大福山林道との交点に到着
大福山林道との交差点に掲げられた地図を見ていたらふたりのバイク乗りが同じように地図を見、道を探しているようだった。聞くと亀山に降りたいらしいので、僕が来たほうの道は養老渓谷から来た道だと告げた。それならと彼らは大福山林道のほうを選んで走っていった。バイクにはフライフィッシング用の竿が刺さっていた。
歩いて周辺を少し散策すると、僕が来たほうの林道は女ヶ原林道だと書いてあった。
今度は車が一台やってきて、道の少しへこんだ場所に止まった。降りてきた人はザックを背負い「こんにちは〜」と言って僕の来た女ヶ原林道のほうへ進んでいった。僕も「こんにちは」と答えた。トレッキングだろうか。登山用の案内もいくつか見かけたし、大福山周辺に登山コースもそろっているようだった。
大福山林道に合流し、北へ向かった。
緩めの下りと上りを繰り返しながら、道は稜線上に出たようだった。左右共に遠くまで見通せるようになって来た。
どちらの眺望も緑の山々が見えるだけだった。この景色のなかに身を置かれているとなんだかとても山深い場所にいるような錯覚に陥る。しかしながら標高はわずか150mから180m。房総の自然の奥深さを感じた。
遠望はどれだけ利くのだろう。朝からすでにもやっていて遠くまでは見通せない空気だった。澄んでいればどのあたりまで見えるのだろう。もしかすると今は霞んでしまっているだけで東京湾の海が見えているかもしれない。
眺望が開けた場所でさまざまな鳥の鳴き声が響くなか立ち止まって遠くを眺めたり写真を撮ったりした。自転車が一台通り過ぎた。軽く会釈をするといぶかしそうに僕を見て通り過ぎていった。あとで思い出してみれば今日すれ違った自転車はいずれもロードで、見るからにアスリート系だった。路面は荒れているところもあるけれど、交通量がほとんどなく、適度にアップダウンが繰り返すコースは練習にもってこいなのかもしれない。練習で追い込んでいる身からすれば、自転車を止めてガードレールの上に乗って遠くを見たり写真を撮ったりしている様子は、不審に思うに違いないことは容易に想像できた。
林道が県道を横切ると、万田野林道になっていた。道路としては一本でも林道としては複数がつながっているようで、どこからどこが何林道というのがわかりづらい。
万田野林道の次は音信山林道、そして丹原林道と続いた。
万田野林道は大福山林道から続く稜線上の道、引き続き緑深い山々を左右に見ながら進んだ。この2林道をつなぐ区間は「スカイライン」と称していいほどだと思った。
音信山林道は一変して森のなか。木立や竹に囲まれた薄暗い道だった。竹林はところどころ放置林になってしまっているところもあり、枯れて朽ちた竹が道路に覆いかぶさるように倒れていた。背の高い車は竹に引っかかってしまうかもしれない。
丹原林道は入口を見過ごしそのまま県道を進んでしまいそうだった。入ってみても林道っぽさはなく家から家を結ぶ市道といったムード。周囲も田畑農地が多いから余計そう思えた。
ひととおり走り切り、ツーリングマップルの紫道路は終了。国道409号に出た。
道路反対側少し離れたところに目をやれば同じ山吹色の林道標識が見えた。少し興味を持ったが、ここから木更津に出る計画をしているので写真だけ収めて今日の林道めぐりを終わりにすることにした。
林道を走っているとこういうことはよくある
緑深い山々
大福山から万田野の林道にかけてこんなすばらしい道が続いた
朽ちた古い標識などを見るとつい萌える
おしまい 今日走った林道集